昼行灯

讃歌の昼行灯のレビュー・感想・評価

讃歌(1972年製作の映画)
3.8
自分の中の春琴抄のイメージに近いうえ、厠や性行為シーンなど小説では描かなかったところに焦点が当てられてるところが憎い。他方でちゃんと性行為を描いているはずなのに、春琴が白塗りで全然美人じゃないため(ごめんなさい)下品にはなってない。

冒頭からインタビュアーの主観ショット&対象であるお坊さんとの距離が近すぎるのがウケた。そのうえ老人ホームと言った身近なモチーフに加え、乙羽信子と新藤兼人のリバースショットで女中という作品の中の人と実在の人が結びついてる印象があるため、春琴抄はもしかして実際にあった話なのかな?と思わせる作品。

春琴と佐助のあいだの日常のシーンや性愛の下りは、下世話なインタビュアーが女中から無理やり聞き出してるため、回想されてるのもあると思う。その罪滅ぼしの演出なのか、新藤兼人の口から血が出ている(きわめてATG的)

乙羽信子の演技がスゴすぎるのと、新藤兼人の棒読み感のリズムが癖になる。これは春琴と佐助の稽古の下りとも対応してると思う。飛躍しすぎかもだが、ここに春琴と佐助の関係と新藤乙羽夫妻の関係を見出すのもアリだろう…

逆に(逆に?)最もATG的演出とも言える目のシーンはあんまり好きじゃなかった。佐助の肉体の表出は1番いらんやつでは。スローモーションの変なカット割もうーん?あえてキモく描くことによって、佐助が盲目になったことでちょっと引いてしまった春琴に感情移入しやすくなってしまってる?
とはいえ、春琴抄で一番好きな、佐助が盲目になったことで、春琴が佐助の愛を受け止めるに足らない存在になってしまった場面が、新藤兼人演出と解釈一致でよかった。針で目をつくのは完全に佐助のエゴで、これは春琴の要求を遥かに超えたものだったと思う。だからこそ、春琴は「嬉しく思いますよ」の言葉を出すまでに時間がかかってしまったのだと。その辺の間の演技をきちんとやってもらえて感謝🙏
昼行灯

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