ろくすそるす

飛ぶ夢をしばらく見ないのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

飛ぶ夢をしばらく見ない(1990年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 突然、年が若返る病気にかかった老婆と中年の営業マンとのロマンスを描く、山田太一版の『ベンジャミンバトン』とも言うべき作品。
 細川俊之演じる建築会社の営業部長田浦は、人生に空虚さを感じたのか、寿司屋の二階から飛び降りたことで足の骨を骨折し、ベッドで寝たきりとなる。そこで同室となった女性と衝立を挟んで奇妙な会話をする。彼女は夫を裏切ってやるために、若い声で言葉で自分を「犯してください」と言ってくる。音と想像力だけのエロい世界で、とても官能的。
 だが、翌朝、衝立がどけられると、そこで寝ていたのは白髪の整った顔立ちの老婆だった……。
 しかし、後日退院した田浦のもとに、夫と離婚して驚異的な若返りをした石田えり扮するキヅキムツコが、これまた脅威的な妖艶さで登場する。これには、田浦もぞっこんとなってしまう。
 ここから、ロマンスに心躍らせる中年男と、もう一度自分の人生を生き直す奔放なムツコとの逃避行のような恋愛劇が展開されてくる。ラストは哀愁が漂って切ないが、個人的にはフィンチャーの『ベンジャミンバトン』より(雷ネタは良いけど)、こっちの方が好き。子役のアフレコはいまいちで、違和感を覚えるけれども、佳作に仕上がっていた。