烏丸メヰ

ジェイコブス・ラダーの烏丸メヰのレビュー・感想・評価

ジェイコブス・ラダー(1990年製作の映画)
3.6
お気に入り作品記録。
ホラーと呼ぶにはあまりにも静謐であまりにも苦しい、混乱と幻視と痛みの物語。

ベトナム戦争の折、戦場で傷に倒れたジェイコブは、今やアメリカに帰り平和な日常を取り戻していた。
しかし彼は昼夜を問わず不可解なものを見るようになっていく。
ある日、かつての戦友も同じ症状に悩まされていると知りーー

どこまでが夢でどこまでが現実か分からない、日常と回想と幻視の境界が失われていく映像の数々がかなり印象的。
オバケや怪物的なルックの恐怖で怖がらせるような映画ではないが、ジェイコブが目の当たりにするおぞましい景色は忘れられないヴィジュアルとして記憶に刻まれている。

治癒能力を失っているが故に塞がらない傷から流れ出す膿、腐敗した体液のような痛ましい物語。
ジェイコブの身に起こる事を“残酷で悲愴な戦争の傷痕”と捉えていても足りなかったと気づかされるラストは重たい衝撃となって胸にのしかかる。

“ヤコブの梯子”それは、天国へ至る階段。
烏丸メヰ

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