A8

ピアノ・レッスンのA8のレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
3.7
圧巻の一コマ一コマにみるみる魅了されていく、、説明なんていらない、もはやセリフなんていらない。まるで滑らかに次々と描かれる絵画のような。

話せない訳ではない。だが、心のどこかでいつの日か言葉の鍵を無くしたおかげで、彼女は話すことはできなかった。言葉の代わりとなったのは“ピアノ”であった。

ニュージーランドのマオリ族が住む未開の地に嫁ぐことになった彼女は娘を連れてその地で暮らすことになる。しかし、理解のなかった夫の勝手で、ピアノと土地を引き換えに売られてしまうのであった。その買主の彼はと言うとピアノが全く弾けないのであった。だから“ピアノ”のためにレッスンをつけることに、、そしてそれが秘密のレッスンと変わっていく。

言葉を離さない主人公の感情は、“ピアノ”と“娘”から読み取れるような仕組みであったのがかなり印象的。
あれほど自分の体の一部といっても過言ではない“ピアノ”のひと音符を、手紙がわりに使うシーンは中でも彼女の気持ちの変化が色濃く描かれているシーンだと思う。

どんよりとした薄いブルーを基調としたこの映画は、美術館で絵画を観ている感覚に襲われることは不思議だが、その例えがしっくりくる作品。

無機的な主人公かと思いきや、恋そして愛を知り、彼女への印象がひっくり返る。

意外と人間的な感情の部分が交錯する映画。それを絵画のような美しいコントラストでうまく包み込んだ作品であった。
A8

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