ちろる

インドシナのちろるのレビュー・感想・評価

インドシナ(1992年製作の映画)
4.2
159分の長編なので、なかなか手を付けられなかったけど、こういう大河的なストーリーは個人的に好みジャンルなのでもっと早く観ておけばよかったと後悔中。
フランス人の美しいゴム園の女主人である中年女性とその養女でベトナム王家の血を引く少女という2人の女性と、その母娘を愛したフランス海兵の男が、時代に翻弄されながら波乱万丈すぎる人生を歩む。
うっとりとする絵画のようなベトナムの自然の映像とともに流れグイグイと引き込まれてしまう。

私は「愛人 ラマン」や「天と地」「青いパパイヤの香り」も大好きで、潜在的にベトナムびいきなのかもしれないけれど、
ベトナムの大自然やベトナムの王宮、そして植民地時代のフランスとアジア文化の融合した街並みやインテリアなど、全てのシーンが見所なほど映像が綺麗なので是非それら皆に堪能してほしい。

カトリーヌ ドヌーヴ演じるエリアーヌは、恋に溺れることすらできない実利的なかわいげのない女にも映るが、この作品全体に覆い被さるのはただ、ひたすら愛する養女を幸せにしたいと願う無償の母心で、それを強く願えば願うほどに全く予想だにしない方向に運命が動いて2人を引き離して行く過程が辛い。

背景にあるフランスによるベトナム植民地事情というものが、大きく親子の運命を変えて、愛し合う母娘を引き離してしまうけれど、娘の将来のためゴム園を守ってきた主人公が決して味わうことのない熱情のロマンスを愛する娘が合わせ鏡のように身を焦がすように引き受けて行くのをみて、やはりこの2人は血が繋がっていないけれど一卵性親子なのだと思った。

因みにガイといい、ジャンといい、この作品の男たちはどうもダメな部分ばかりが目をついてしまっていることが残念に映る。
逃避行中の川での乳飲み子への洗礼や、旅すがら母乳を探す下りはとても聖書的で崇高なエピソードなはずなのに、なぜか最後までジャンを心底好きにはなれないままでいる。

この演出が意図的なのか私の勝手な感覚なのかは分からないけれど、カトリーヌ ドヌーブの圧倒的な美貌と、ベトナム人少女役のリン ダン ファンの儚げな色気がこの作品の全てを彩っているのは確かで、どちらかというと女性賛美寄りの印象を受けた作品でもあります。
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