メランクさん

スモークのメランクさんのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
5.0
追悼ポール・オースター

今はなき高校最寄りの駅前の書店で、
「スモーク/ブルーインザフェイス」の脚本の文庫版を買ったのが本作との出会いです。

その時点で和訳されてるオースターの作品は全部読んだから、
脚本ていう読み慣れない形式のやつを読んで、
同時に原作となった「オーギー・レンのクリスマスストーリー」も読みました。

ようやく映画の「スモーク」を観たのがたぶん20年くらい前で、
ちゃんと見たのは本当にそれ以来かもしれない。

正直、原作短編を肉付けした作品てのが頭にあるから、
初見時はラシードの話とかぜんぜん乗れなかった印象がある。
でも、時を経てオースター作品を俯瞰して見れるようになって見ると、
マジでその肉付け部分こそオースターだと思った。

どこかに取り残してきたアイデンティティ。
回りに回ってかたちを変えていく何か。
本質的な善意と止められない悪戯心。
予定調和すれすれのこのほっこり感こそオースターなんだよな。

トム・ウェイツに乗せたモノクロエンディング最高です。

なかなか小説を一気読みできないからとりあえず映画で追悼します。