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πのBeSiのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
4.8
ダーレン・アロノフスキー作品に触れるのに、何故「ノアの方舟」から観てしまったのか。も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。ぼちぼち観ていきます。

常人離れした知能指数を持つ数学者マックス・コーエンは、自作のスーパーコンピュータを用いて株式市場の予測を行っていた。そしてある日、"世界に存在する事象のすべてはそれぞれ一つの数式で理解できる" と信じる彼の前に、ある日コンピュータが巨大な216桁の数字の塊を吐き出した。やがて彼は、その日を境に216桁の数字が持つ不可思議な魔力に取り付かれていく…...。


✔数学と神は結びつくのか
そんなこと考えたって数学が苦手な僕からすれば知るわけねーだろってなります。でも、数学における "答え" が何故全て正しいように作られているのかを考えた時、数学の絶対的な "答え" は人間の感覚に基づいていて、突き詰めていくと、ある種の宗教哲学に辿りつくのではないかなと。また個人的には、そもそも神様が存在するか否かの議論はどれだけ深入りしても終結することは無いと思っています。しかし、古代の技術が受け継がれたことで、数学的理論は全てにおいて利用できるという価値観が徐々に、かつ非常に自然に広がり、主人公マックスやレニーのような考えを持つ人々が現れ始めたんじゃないかと思います。彼の考える "世界に存在する事象のすべてはそれぞれ一つの数式で理解できる" という考えは、狂気的ではありますが、あながち間違ってないのかも。頭痛くなってきた。あ〜。

✔信念や固定観念に取り憑かれた人間
このような、主人公マックスの考えに反論する人物として、彼の師匠ソルが登場します。マックスの価値観を覆そうと、ある意味で真理とされる事実を何度もマックスに伝えますが、一向に彼が自分の信念を曲げることはありません。これぞ、天才であるが故の苦悩です。自分の中の概念に段々と取り憑かれていき、何も見えなくなる。人間の残酷な本質です。頭良すぎると何かと辛いんだぜってこと。「ビューティフル・マインド」と似通う映画ですね。

✔低予算ながら革新的な映像表現、音楽
純粋に、すげーーって思いました。(語彙)
細かいカット割りがマックスの忙しなく特に変わることの無い日常をテンポ良く映し出していて、そこに良いタイミングで挿入される刺激的なテクノのBGMも最高。脳汁ドバドバ案件です。マジでカッコイイ。
・2πr²
https://youtu.be/k02KIOUU8Hw
・2πr
https://youtu.be/35e61H2v4HQ

終盤にかけて徐々に堕ちていく彼の姿を、モノクロームと不穏な音楽で鮮明に描くことで観客を不安にさせてます。視覚的効果と精神的効果が両方共に大きく、人によっては疲労感を覚えるかと。しかし、いずれの表現も革新的で、画面から目を離さずには居られませんでした。見てはいけないものを見ている感覚もあって高い中毒性がありましたね。6万ドルでこんな凄い作品が作れるなんて......。



ダーレン・アロノフスキーの原点にして、彼の類い稀な才能を存分に味わえる、ノンコンピューターグラフィック・サスペンス。サンダンス映画祭で称賛される理由も納得の秀作です。超好き。
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