KunihiroMiki

ゴーストワールドのKunihiroMikiのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
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女性、しかもパンクやサブカルチャーに耽溺している女の子の思春期を描く映画は、男性である時と共通する心情描写もあれば、女性だからこその心理とそれによって起こる事件があってそこが面白いポイント。
スクールカーストのなかで生きる同級生たちを一緒くたにカテゴライズして、自分はアウトローであり神でもあるような態度で見下す、自意識過剰で傲慢で偏狭なティーンエイジャーの感情任せの行動が、家族や友達を悲しませる。それがサブカル青春モノの定型。そこに女性という属性が加わると、「若い女」という本人すら持て余す磁力の強い要素が加わる。
おじさん、という存在が無条件に否定されるべき対象になりつつある現代では、ブシェミの翻弄される姿に、思うところが多々ある。ツライ…。
イーニドはしかし自分のなかに渦巻いている不満や苛立ちに身を任せるほどに周囲をゴジラのように破壊して回る自分の姿に絶望して、旅に出る。
現代は、若者は常に俯瞰的な視点を強くもっているという。だから冷静で倫理的な人たちも多い。一方で、俯瞰しながらも破滅的な行動を続ける、やめられない人も増えているような気がする。そこには自分を顧みるチャンスがない。それはすごく不幸だ。イーニドはドン底にいったから浮かんでこれた。そういうひと時は誰にでもあって、周りもある程度までは見守ってくれる。多少の粗相や迷惑も、大目にみる。
でも、すべてが地盤沈下してしまったら、底が底がじゃなくなってしまう。
レコードショップの店員がイーニドに言ったセリフ。「いまパンクをやりたいならビジネスマンになって内側から破壊することだ」。
当時は鋭く響いたのかもしれないこの言葉も、今となっては牧歌的ですらある。

監督や脚本家の意図とは別のところで、変わらないこと、変わってしまったことを考えさせられる映画だった。
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