ちろる

娘・妻・母のちろるのレビュー・感想・評価

娘・妻・母(1960年製作の映画)
4.1
元々始まりから財産分与やらなんやらきな臭い話てんこ盛りだったが、長男の大きな失態のせいでそのお金の話が具体化してくる後半30分は本当居心地悪いくらいぞわぞわする。

皆家庭を持ったり、仕事で自立したりしながら様々な形で生きる兄妹、そしてたまに愚痴りに長男家族も住む実家に戻って穏やかに母親はそのストレスを受け止める。
なのに、、、なのに
自立した子どもたちはやはり一番自分が大事で、自分勝手。
いざ立場が危うくなれば母親を押し付け合い、優しい母は自分の去り際を悟り始めるのだ。

パッケージのせいでモノクロかと思ったら美しいカラー映像、原節子さん、高峰秀子さん、淡路恵子さんに草笛光子さんなどなどモノクロで観ることが多い昭和の美女たちをこぞって鮮やかな色彩で拝むことが出来て感動。
きれいごとでは終わらない「お金」問題に切り込みながらも原節子さん&高峰秀子さんの二代トップ女優が心落ち着くかたちで締めてくれ、笠智衆さんが突然現れるラストの公園のシーンのおかげで途中のゾワゾワ感はようやく一掃された。
いやーさすが成瀬作品、娘、妻、母とそれぞれの立場の女をしっかりと知り尽くし、台詞一つ一つや細かいシーンの演出にも抜かりない。
特殊な立場ではない「昭和」の女一番ど真ん中をしっかりと見せてくれる作品は間違いなくこれなんだと確信できる名作。
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