りょう

肉弾のりょうのレビュー・感想・評価

肉弾(1968年製作の映画)
3.6
 1968年に劇場公開されて、当時の日本人がどう観たのかわかりませんが、戦後の高度成長期でもなければ、こんなブラックジョークを作品に反映できなかったと思います。岡本喜八監督は、それを逆手にとって、浮かれた社会に警鐘を…という想いもあったのかもしれません。いま観るとさらに、反戦映画としてのメッセージが直接的でわかりやすいです。
 主人公の“あいつ”が何気に学問につうじていて、特幹候なのに上官に進言したり、単細胞なキャラクターになっていないところも反戦映画としては効果的でした。出征する前日までに出会う人々との会話やエピソードも面白いです。
 ただ、予算が不十分だったのか、映画としてのつくりは粗雑で、かなりもったいない印象です。とてもシュールな演出が少なくないので、それをしっかりした映像と編集で仕上げなければ、ただの奇抜な作品(いわゆる珍作)になってしまいます。
 零戦の特攻隊や人間魚雷は有名ですが、魚雷にドラム缶をくくり付けた“兵器”が実在したのでしょうか。どれも残虐なことには間違いありませんが、終戦間際に兵隊どころか人間としての尊厳も奪う無謀な作戦に言葉もありません。登場する少年たちの言動も含めて、当時の日本のすべてが狂っていたことが巧みに表現されていました。
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