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訣別の街のkSのネタバレレビュー・内容・結末

訣別の街(1996年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

「信義」とは何か。
市長が信義と信じていたものは、ただの利益を求める関係で、浅薄なものでしかない。
判事は、信義の名目ではなく金の誘惑に負けて罪を犯した。アンセルモは、周囲に良いように操られ、焦燥感が彼を悪人にした。

罪を犯した理由はそれぞれ異なる。マフィアのボスが悪事に手を染めているのも、また異なった理由だろう。
市長が、自分の信念としていた「信義」が表面的なものでしかないと分かった時、彼は政治の世界と訣別を選ぶしかなくなったのかな。自分の信念が根本から崩れたとき程、人生の空虚さを感じることはない。

ケビンは、市長と訣別しつつも、語り口から市長の血が流れていることを感じる。
これが、本当の信義なんじゃないかと思う。利害を超えて、心と心で通じ合い、互いに恩義を感じている。

夏目漱石の「こころ」の表現を思い起こした。
「肉のなかに先生の力が喰い込んでいるといっても、血のなかに先生の命が流れているといっても誇張ではない」
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