真鍋新一

ずべ公番長 東京流れ者の真鍋新一のレビュー・感想・評価

ずべ公番長 東京流れ者(1970年製作の映画)
2.3
一作目がすばらしかったので期待してしまったが、お世話になった人のために殴り込みという任侠映画のフォーマットに則った平凡な作品になってしまったように思う。

とはいえ大信田礼子のガラガラ声には情があり、ついつい胸を打たれる。「ほんとうの、ほんとうに、ダメなのかい?」と女子鑑別所の所長に迫るだけで涙を誘う。

最初はパンチパーマのカツラをしていたので誰だかわからなかったが橘ますみも最高。あのキョトンとした顔にやられてしまう。そして実際、悪役の上田吉二郎はそれでやられる。

集三枝子は日活の『野獣を消せ』に比べたら、すべてにおいてだいぶバタ臭く下品に撮られているが、それが東映カラーなのかもしれない。ハイソな人は必要ないらしい。これはこれでたくましい役どころでそこは魅力。

池玲子と杉本美樹の女番長シリーズと同じく、キャラの立ったメンバーがキャッキャしている女子会ムードが麗しい。特に個別のエピソードが与えられていないのに存在感のあった夏珠美はちょっともったいなかった。歌舞伎町で大暴れしている彼女たちを見ていると、ほぼ同じエリアのトー横あたりを舞台に置き換えて現代版を作るのも余裕でできそうだ。

話がつまらなくても殴り込みシーンの素晴らしさですべてをチャラにしようとするのも任侠映画あるある。この映画の殴り込みも映え映えの映えで最高だ。そのずべ公メンバーのなかに六本木はるみ(六本木お吉=吉野ママと関係あるのか?)というおネエキャラがおり、それが昭和的な多様性配慮というものなのかな、という気がした。

歌謡シーンに出てくるのはビクター専属のジ・アース。クール・ファイブの二番煎じみたいな感じで、あまり有名ではない人たちだが、歌はちょっとクセになる。

序盤で大信田礼子が務めるおもちゃ工場で大写しにされるドナルドダッグの人形の不良品は今だったらディズニーに訴えられる。この時期の東映のコンプラ無視描写は探せばいくらでもあるんだろう。
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