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コールガールのbeachboss114のレビュー・感想・評価

コールガール(1971年製作の映画)
4.0
ミステリーやサスペンスとしてはどうってことない展開なので、ストーリーだけを追っていると正直つまらんが、凝った撮影と70年代当時のNYの街の雰囲気は見どころ。

映画や文学では何かと都合よくマジカルに扱われがちな「娼婦」という役柄に血肉を通わせ、単なる別世界の下賎な職業としてではなく、一般女性の自立した生活手段の一つとして描いている点が興味深い。それによって、闇社会と一般社会のファジーな境界線を「都会の孤独」という共通項で浮かび上がらせている。

そういう意味では、後年の『プリティ・ウーマン』とは好対照の陰と陽。片やストリートで客を拾う街娼で、片や電話一本で派遣される高級娼婦。片や社会派のリアリズムで片や偽善的ファンタジー。不景気な時代の高貴な精神性と、バブル期の安っぽい価値観。舞台もNYとLAってのが象徴的。曇りがちなNYの空と湿った空気感、林立する高層ビル群と薄汚れた街路が都会の冷ややかさと寄る辺なさを増幅させる中、地に足着いた生活感を醸し出している。

だんだん親父さんに似て顔がギラついてきた頃のジェーン・フォンダ。カッコいい女優の代名詞として、役柄選びも戦闘的でめんどくさいものになり、後進に「女優としての到達点」を指し示し始めたのは、この辺りから。

曲者番長サザーランド父が珍しく善人役で、寡黙にピュアな眼差しを貫くのが意外。
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