佐藤克巳

密航0ラインの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

密航0ライン(1960年製作の映画)
4.5
1960年は、日活ダイヤモンドラインが成立した輝かしい年だが、その本線では無い長門裕之、小高雄二、中原早苗に清水まゆみが加わって、傍流の鈴木清順監督によりハードボイルド調サスペンス映画の傑作が誕生していた。冷徹非道も辞さない長門と道義心を大切にする小高の対象的でありながら学友の記者が、麻薬、人身売買の香港密輸ルート解明に鎬を削る、スピーディーでメリハリの効いた清順の演出力は最盛期に見劣らない。中原は大胆不敵な暗黒の闇を象徴し、清水は健気に働く職業女性を、初井言榮の夜の女、小沢昭一の闇の情報提供者と、高度成長期に蠢いた日本の裏社会を描出した見事な風刺として素晴らしい作品であった。
佐藤克巳

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