烏丸メヰ

デッド・サイレンスの烏丸メヰのレビュー・感想・評価

デッド・サイレンス(2007年製作の映画)
4.6
お気に入り作品記録。
何度観ても、何年経って観ても好きな、2000年代ホラー映画の中で個人的に最高傑作の一つ。
タイトルからストーリー、恐怖の造形と正体まで、全てにおいてほぼ非の打ち所の無い、私の求めるホラー映画の一つの形。

夫婦の元に届いた差出人不明の荷物。
中身は古びた腹話術用人形だった。
妻は笑いながら、故郷に伝わる童謡“女腹話術師の詩”を思い出すーー


ジェームズ・ワン監督の得意とする恐怖描写の緩急、婉曲的心霊系の怖さと、ゴアや流血の直接的な恐さ、建築とカメラワークの折衷が視覚的にも楽しく美しく印象的。
ホラー映画のつくりとして恐怖と謎解きを常に主軸に据えた誠実さがある(何も起こらないパートが単なる若者のバカ騒ぎを映してるだけ、みたいなシーンでの冗長なかさ増しが一切無い)。
が、しっかりと綿密に繊細に織り込まれる人間の描写がやはりジェームズ・ワン監督。
物語序盤、主人公の妻リサが布だか服だかをシャツに入れるシーンが何度観てもお気に入り。ここにより、後々出てくる物語の一要素が“舞台装置的後出し要素”ではなくきちんと印象深く、リサの人物造形としても心に残る。

脚本のリー・ワネル氏はこの作品の仕事を最悪のものだったとしているらしいのだが、変なてらいがなく簡潔で90分で過不足なく描ききれてしっかり余韻も残していく本作が、『SAW』等彼等の他の代表作と比べてそこまで劣ったものとは、私の素人目には思えない。
むしろエンタメホラーとしては『SAW』以上に突っ込み所の粗が少なくて私は好き。

あなたには、腹話術師の言う“完璧な人形”がどれか、分かりますか……?
烏丸メヰ

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