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屠殺者のScriabinのレビュー・感想・評価

屠殺者(1922年製作の映画)
5.0
スピード狂の断罪と更生という説教臭いテーマながら、映画としての面白さも魅力もある。スクリーンプロセスも割と自然だったし、暗闇でも頑張って撮ってた。"I object!"の出し方やラジオから出てくる吹き出しみたいな字幕も良かった。病室の影絵も。今年は100年前の映画をたくさん見よう。

ローマのシーンが目当てだったけど、やはり豪華。少ししか出てこないのに現代篇よりもこちらの方が金かかってるんじゃないかと思ってしまう。ホールを上から映すアングルも良かったし。アルマ=タデマのアトリエの写真に似てた。弁護士にも批判されていたMythology and Misogyny的なこの時代に流行った喩えについてはもう少し考えてみたい。『男性と女性』『十誡』と共通する、現代と古代を並置する作り方。最初のパーティーシーンは《ヘリオガバルスの薔薇》では?剣闘士の片方の兜はまんまジェロームだったし、侵入してくるゴート人だかゲルマン人だかの棟梁の兜はニーベルンゲンのハーゲンっぽかった。意識してるのかな。

リディアの顔が好きすぎる。ただただ美しい。ちょっとキルスティン・ダンストに見える瞬間があった。デミルって黒髪美女が好きなのかな。主役が金髪だった映画見たことない。この時期の映画見てると、男女観の本質は実は変わってないのではとか思ってしまう。リディアみたいな子は今でもいるし、最後に出て来たリディアの女友だちがあまりにも既視感ありすぎて…ちょっと感動した。デミル映画の男たちはだいぶ好みなんだけど、これはマッチョイムズってことなのかな。それだけに回収できない気はするけど、『男性と女性』も『十誡』もかなりしっかりしていて頼れるキャラだった。

裁判シーンをかなりしっかり描いていたけど、裁判映画のはしり?女子刑務所のシーンはChicagoかと思いきやDiary of a Lost Girlの矯正院の雰囲気に似ていた。
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