レオピン

学生野郎と娘たちのレオピンのレビュー・感想・評価

学生野郎と娘たち(1960年製作の映画)
4.2
曽野綾子の「キャンパス110番」が原作。
60年安保の年の当世学生事情。政治的なものは出てこないがすべて政治的ともとれる。

学生たちの経済格差。麻雀ばかりで遊んで暮らしている学生 裕福で副業なんかもしている学生 かたや食べるものにもカツカツで人の財布に手をつけてしまう学生。そんなところに米国帰りの新学長による学費4割値上げ。ったく闘争の時代によくやるよ。

演劇青年の長門、スケコマシ学生の岡田、苦学生の芦川いづみ。他にもOL上がりの高利貸し学生や、下宿屋の尻軽娘。それぞれの学生生活を見せてくれるがやはり実質的主役は中原早苗のノエミちゃん。

女国定忠治と異名を持つエネルギーの塊のような娘。やることなすこと直線的で、不甲斐ない男ども相手に所かまわずスパッと啖呵をきって平手打ちを見舞う。つ強い。
同部屋のいづみちゃんからはあんたは12歳よとマッカーサーのようなことを言われてしまうがそんなもの彼女にはきかない。

ノエミとは何もかも対称的で女子学生の中で一番今っぽかったいづみちゃん、心を寄せた人に見られたことがショックだった。割り切っているようで割り切れないのよね。。

終盤の思いがけぬシリアス展開には沈みかけたが、ノエミの陽性に救われる。
恋人未満だったガリ勉伊藤孝雄の主張は苦学生の心をストレートに仲谷昇の学長にぶつけていた。うんわかるよ。だがその涙に濡れる彼の横っ面を引っぱたくノエミの上からかぶせてくる苛烈な正義に呆然。。そして思わずガッツポーズ。

当時の大学進学率はまだ13.7%。女子は2.5%。かなりの小数派だが既にマスプロ教育と揶揄され、益々大学の価値は減じる一方となっていく。よく入るまでは難しいが出るのは楽なんて言われるが、そんな事もない。若いときは色々な要因があって学業どころじゃなくなっていく者も多い。彼らだってみんなボロボロ、除籍・中退は当たり前。だけど時代はまだ高度成長期。なんだってできる 死にはしない

ふと 啖呵を切るという言葉自体今若い人には通じないのではないのかという気がした。町で喧嘩をみかける事も減ったし、直情径行な人も少なくなったしな
少し前まで気持ちのいい啖呵というのがあった。嫌な気持ちにならない啖呵というのがあったのだよな。

編集も台詞もみんな驚くほど早い。学費値上げを受け、ねぇねぇデモっちゃう?からの流れは天才かよ。スピード、テンポだけ見ていても早過ぎた天才という言葉に納得しちゃう。 

とにかくこんな活きがいい痛快作を見ない手はない。世の中に平手打ちしたくなった時にはノエミの威勢を思い出すぞ。 

うるせーぞ ロッキード!
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