Jimmy

愛を乞うひとのJimmyのレビュー・感想・評価

愛を乞うひと(1998年製作の映画)
5.0
この映画、初見は2007年なので11年半ぶりに観た。
凄絶な作品であり、「原田美枝子の最高傑作!」という事と「感動の嵐で大感動」した事は鮮明なのだが、映画が凄過ぎて物語の詳細部分が記憶から飛んでしまった。こうした傑作は、なかなか無い!
2回目に観てみて思ったのは、「やっぱり大傑作!」ということ。

記憶に残っていたのは、母親から壮絶な虐待を受けて育った女性(原田美枝子)が父親の遺骨を捜しながら自分の過去と向き合うドラマであること、幼児虐待シーンが凄過ぎたこと、雨の中で原田美枝子が何か叫ぶこと、といったあたりで、機会をみて是非再び観てみたいと思っていた。今回、購入DVDでまた観ることができた。

改めて観てみると、過去と現代の物語を並行して描きながら、「ひとつの真実」に辿り着く映画の語り口が素晴らしい!
しかも、日本と台湾の場面を織り交ぜながら、物語を綴っていく平山秀幸監督の手腕は見事。

土砂降りの雨の中で少女が父親(中井貴一)に手を引かれて歩く後ろから母親(原田美枝子)が叫ぶ過去場面から始まり、現代場面に切り替わり父親の遺骨を探す女性(原田美枝子=2役)が描かれる。
過去パートでも時系列が遡及している部分あり、母親と父親の出会いシーン等は後半で出て来る。

さて、物語は、昭和29年~30年前半頃に、母親=豊子(原田美枝子)が同居男を次々と替えていくという環境で育てられた昭恵という少女は、年がら年中、母親から虐待されていた。「お小遣いちょうだい…」と手を出せば掌にタバコを押し付けられ、殴られまくり、蹴られまくり、階段から落とされ……と壮絶な虐待シーンが描かれる。
昭恵の救いは結核患者になってしまった父親(中井貴一)の思いやりぐらいか…。そんな父親も居なくなるのだが、なぜ居なくなったのかはなかなか描かれない中で、豊子の次の男がやって来て、母親から「新しいお父さんだよ。お父さんと言え!」と言われる子供たち。そんな辛すぎる少女時代を過ごしてきた昭恵が就職すれば給料は母親に全て没収され…。

現代では、大人になって母親となった昭恵(原田美枝子=2役)が父親の遺骨を探している。役所を巡ったり、台湾のツテを辿ったりしながら…。
時には、昭恵の娘=深草(野波麻帆)を連れていく。台湾での遺骨探しでは、深草が母親の思いを代弁するように率直な意見を述べる。この母娘の関係が良い。
そして、母親の昭恵が「何故、父親の遺骨を探し回っているのか…」が明らかになるあたりで、この映画タイトル『愛を乞うひと』の意味がわかって、感動の嵐となる。

昭和30年代前半の美術も見事であり、オート三輪なども走る街並みをよくぞ再現したものだ、と思わされた。
また、過去パートと現代パートで時代に合ったバージョン(白黒版、カラー版)がTVで映されるCM「♪カステラ1番、電話は2番、3時のおやつは文明堂…」も良いセンス。

観直しても、また感動させられた映画であった。
日本が世界に誇ってよい大傑作!
Jimmy

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