Omizu

愛を乞うひとのOmizuのレビュー・感想・評価

愛を乞うひと(1998年製作の映画)
4.0
【1998年キネマ旬報日本映画ベストテン 第2位】
『学校の怪談』平山秀幸監督作品。下田治美による同名小説を原作とし、2000年には漫画化もされた。キネ旬監督賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめアカデミー賞外国語映画賞日本代表にも選出された。

とにかく虐待描写がキツい。現代パートと過去パートをシャッフルしながら進むのだが、現代パートになるとほっとするくらい過去パートの虐待が辛かった。

壮絶な作品だった。キネ旬2位も納得の強烈な映画。平山秀幸ってあまりつかみ所のない監督だと思っていたけどこんな映画つくれる人なんだ。

若くして亡くなった朝鮮人の父、愛し方を知らない売春婦の母、そしてその娘をじっくりと描いている。それぞれの生がリアルに感じられる豊かな演出が素晴らしい。

もちろん原作の力もあるんだろうとは思うが、手を抜かずしっかりと虐待と再生を描いた演出力は評価されるべき。繰り返される母による暴力、またそれを利用した乞食など本当に救いがない。

「逃げることは悪いことではない」とよく言うが、この話に関して言えば本当にそれを感じられる。自分が虐げられる環境からは逃げた方がいい。

みるだけで嫌悪感が走る母、そして現在の娘を一人二役で演じた原田美枝子は同一人物とは思えないほどリアル。この年の日本の賞レースを総ナメしたのも当然、圧巻の演技力。

中井貴一、國村隼、小日向文世など助演の男優陣も素晴らしいがやっぱり原田美枝子の映画。彼女の場の支配力がすごい。

照恵の娘、深草に「おじいちゃんの遺骨を見つけたいわけではなく、本当はおばあちゃんに復讐したいんじゃないか」と指摘される。表向きには父の遺骨を探すという目的だが、確かに母への復讐もあっただろう。しかし彼女はただ去る。どんなに虐められても思い出すたった一つの母の言葉。復讐はしたいのかもしれない。でも母への愛がそこには確かに感じられた。

とにかく辛い映画だった。トラウマがある人はフラッシュバックするかもしれないので見ない方がいいかも。それくらい強烈な作品だった。平山監督正直舐めてたけどこれはすごい。名作。
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