櫻イミト

聖衣の櫻イミトのレビュー・感想・評価

聖衣(1953年製作の映画)
3.5
史上初のシネマスコープ作品。「聖書」に基づく物語。監督は「オーケストラの少女」(1937)のヘンリー・コスタ―。アカデミー賞の美術、衣装の2部門を受賞。

※amazon、U-NEXTの配信は画質が悪すぎて本作の美術・衣装を楽しめないためDVDで鑑賞

西暦30年頃のローマ帝国でイエスの磔刑が行われる。磔を指揮したローマ護民官マーセラス(リチャード・バートン)はイエスが刑の直前までまとっていたローブ「聖衣」を手にしたことで、やがて信仰者の道を歩み始める。キリスト教弾圧を進めるカリギュラ皇帝はこれを良く思わず、マーセラスと恋人のダイアナ(ジーン・シモンズ)に真意を問う裁判を開くのだが。。。

初シネスコを意識した美術・衣装、映像画角が素晴らしい。史劇として、デミル監督ほどの見世物的スペクタクル感はないが、ヘンリー・コスタ―監督ならではの巧みな構成力でローマ将校が信仰(正義)に目覚めていく様子を描き切っている。

今年は聖書系の映画を集中して観ていて、イエス磔刑のシーンは沢山観てきたのだが、今回初めて「大魔神」(1966)を連想した。同作のネタ元としてはデュヴィヴィエ監督版「巨人ゴーレム」(1936)や「十戒」(1958)が知られているが、ワイドスクリーン総天然色による磔シーンの映像設計は本作の影響を受けているかもしれない。

しかし本作は悲劇的に終幕するため「大魔神」のようなカタルシスは感じられない。聖書ベースの史劇なので仕方ないのだが、最後に暴君カリギュラが懲らしめられるようなフィクションを観てみたいと思った。
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