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ゲット・オン・ザ・バスのHKのレビュー・感想・評価

ゲット・オン・ザ・バス(1996年製作の映画)
3.8
原題はそのままの“Get on the Bus”
スパイク・リー監督(当時39歳)は本作でも黒人に向けて強いメッセージを送っています。
白人のせいにするだけじゃなく、黒人こそが変わらないと状況は良くならないぞと。
本作は100万人大行進に参加するために、同じ長距離バスに3日間乗り合わせた黒人男性たちのロードムービー。

で、100万人大行進とは何かというと、1963年にワシントンD.C.で行われた人種差別撤廃を求めるデモ(=ワシントン大行進)だそうです。全く知りませんでした。
集まったのは学生から老人までさまざまな境遇の黒人たちで、ゲイのカップルもいれば白人とのハーフ、窃盗犯の息子と手錠で繋がった父親、俳優、映画監督の卵、熱心なイスラム教徒などバラバラ。

しかし、同じ目的のために集まったのに、車中ではゲイ差別にハーフ差別、貧富差別などのいがみ合いが延々続きます。
まあ、たまにみんなで一緒に歌ったりもするんですが長続きしません。
リー監督は白人よりも黒人こそがしっかりこの有り様を見て考えよと突きつけます。
ここまで自分と同じ黒人たちに対して問題意識を持てと強烈に切り込んでくる作風はやはり他に類を見ません。

本作は黒人のために作られた映画です。
じゃあ黒人以外が観てもつまらないかというと、全然そんなことはありません。
登場する黒人たちの言動は必ずしも黒人の専売特許だけじゃありませんから。

バスが出発するとき、オジー・デイヴィス演じる老人がスピーチの終わりに言います。
「この旅が終わったときには、今より少しだけ良い人間になっていますように。」
登場人物たちはかろうじてその通りになったように見えます。
では、見終わった我々はどうでしょうか。
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