一人旅

パリで一緒にの一人旅のレビュー・感想・評価

パリで一緒に(1963年製作の映画)
3.0
リチャード・クワイン監督作。

ジュリアン・デュヴィヴィエと脚本家アンリ・ジャンソン共作によるオリジナル脚本「アンリエットの巴里祭」に着想を得たリチャード・クワイン監督作品で、ウィリアム・ホールデン&オードリー・ヘプバーンが現実と虚構を駆け巡る男女を好演します。

現代のパリを舞台にしたロマンティックコメディで、新作映画の脚本執筆に取り組む脚本家の中年男(ホールデン)と新たに雇われたタイピストのヒロイン(ヘプバーン)の恋のゆくえを描きます。映画の特色は、脚本家が創作を進める映画の脚本が、そのまま二人を主人公としたラブサスペンスの劇中劇としてストーリー展開されることにあります。脚本家が滞在するホテルの一室を舞台にした脚本家と新米タイピストの恋のゆくえを描く“現実”と、金庫破りの男と女のサスペンスと悲恋を描く劇中劇の“虚構”が交錯していく二重構成の巧みさで魅せたユニークな恋愛喜劇となっています。

脚本家の口述に沿って劇中劇が進行したり、あるいは脚本の不出来さから一旦巻き戻ってリライトしていくのが面白い試みですが、欠点としては劇中劇として描かれるクライムサスペンス風味のラブストーリーが面白味に欠けている点にあります。それでも、劇中劇の二人と同じように現実でも惹かれ合っていく二人の掛け合いとロマンスが活気と喧騒に満ちたパリの情景の中にロマンティックに映し出されていますし、『麗しのサブリナ』(1954)以来の共演となったウィリアム・ホールデン&オードリー・ヘプバーンが現実と虚構で二回恋に落ちる男女を一人二役で好演しています。
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