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至福のときのtakのレビュー・感想・評価

至福のとき(2002年製作の映画)
3.2
2000年前後に日本で観られた中国映画は、舞台が少し前の時代か、お話自体が時代がかったものが多かった気がする。僕が多くを観ていないせいもあるだろうが、「フル・モンティ」みたいに操業停止の工場や失業者が出てきたり、ハーゲンダッツが売られている現代中国を映画で観るのは、この映画が初めてだった。テレビのドキュメンタリーなんかでは上海の繁栄ぶりがよく放送されているけど、ここで描かれているような中国に、スクリーンでお目にかかったことがなかった。

それはさておき、これは盲目の少女との出会いによって人間性を回復する中年男の物語である。ある女性と結婚せんがために、その少女の就職を引き受けた男。彼は自分をよくみせるために、自分は旅館の経営者だと嘘をつき続ける。だが物語の後半、盲目の少女を元気づけるためにつき続けた嘘はいつしか親子の関係にも似た愛情に変わっていく。「あんたは本当の事を言ったことがない」とののしられた後、男は少女に読んで聞かせる為に”彼女の父親から”とする手紙を書く。本当は父親からの手紙には娘のことなど触れていないのに。それは嘘が真の愛情となった瞬間だった。が、それは彼女の耳に届かない。その切なさはグッとくるところだ。

ラスト、感動はさせるけど「この先どうなるの?」という心配ばかりが心に残って、僕にとって至福の2時間とは言い難かった。それでもドン・ジエの笑顔には救われる。
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