Jimmy

戦争と人間 第一部 運命の序曲のJimmyのレビュー・感想・評価

4.0
山本薩夫監督の未見作だったので観たが、全編にわたって山本薩夫監督らしい骨太な映像がワイドに映える超大作。原作は五味川純平。
本作は、3部作から成り、全編9時間23分の映画なので、なかなか観られず、ようやく観た。最初から最後まで観るのに約2日かかった…(笑)
日本映画としては、『人間の條件』(9時間31分)に次ぐ長さ。

この「第1部~運命の序曲」は3時間17分、三菱・三井などの財閥に迫ろうとしている新興財閥伍代家を中心に描かれるが、かなりの部分が満州(現中国)の物語となっている。そのため、広々とした大地や中国風景を再現した街並みをワイド画面で捉えたカラー映像が迫力あり、見事な映画になっている。さすが山本薩夫。

昭和三年、伍代財閥の当主=伍代由介(滝沢修)の長男=英介(高橋悦史)の渡米を祝う会が開かれていた。そこには、由介の弟=喬介(芦田伸介)、由介の娘=由紀子(浅丘ルリ子)、次男の少年=俊介(中村勘九郎)などが揃っていた。家族以外には金融家や陸軍少佐などの客もいた。話題は蒋介石が動き始めた満州状勢。関東軍も出兵させるべき…などの話題。要は、関東軍を利用して伍代財閥が利権を得ようというもの。そのために裏社会とも繋がりのある鴫田駒次郎(三國連太郎)などを利用していた。
そんな折、「済南事件」が起こったり、満州では「奉勅命令」の発令有無を巡る画策が巡る情報戦、そして関東軍による列車爆破事件が起こる。<ここで「休憩」入る>

出演者では、高畠正典(高橋幸治)の妻=素子(松原智恵子)が最高に綺麗!
女優では、松原智恵子のほかに、満州女性=趙端芳を演じた栗原小巻、伍代家の娘の浅丘ルリ子が良かった。浅丘ルリ子は寅さんリリーの前で、本作の頃が一番綺麗ではないか…と思う。
その他、高畠(高橋幸治)を補佐する白永祥(山本学)、喬介(芦田伸介)から情報を得るために肉体関係を持つ女性=鴻珊子(岸田今日子)がドラマを盛り上げる。朝鮮人の匪賊=徐在林を演じた地井武男も迫力あり。軍と意見対立する石原裕次郎も出演。

物語に戻ると、奉勅命令が得られない焦燥から列車爆破して中国参謀暗殺したが、それは中国人どうしで対立していた権力者を和解させてしまい、抗日勢力の強化という事態になる。朝鮮人による日本軍攻撃という「間島暴動」が起こったりして、朝鮮人の匪賊は高畠の愛妻素子を誘拐し……。
日本国内では伍代産業の工場で労働者たちが経営者の搾取からストライキを起こし、台湾では「霧社事件」が起こったりして、満州状勢は悪化の一途。昭和六年、関東軍は柳条溝で自分たちの満鉄列車を爆破して、それを「支那軍によって、我が日本の満州鉄道の列車が爆破されたので軍を出す」と攻撃を始める。いわゆる満州事変の始まり。
出兵中の柘植進太郎(高橋英樹)を追い駈ける由紀子。浅丘ルリ子のなかなか激しいラブシーン見られる。…バストは見えそうで見えない。堅牢である(笑)

そして、広い荒野を戦場として、激しい交戦が始まる。不吉な雰囲気の中で昭和初期の戦争はだんだんと激しくなり、砲撃戦シーンなどは迫力あり。無数の人間たちの運命が翻弄されていく様はなんとも言えない屈折の時代を現わしているようだ。

本作=第一部は、如何にして日本は満州を舞台にした戦争が始まったかまでを描いており、戦争に絡んで利権むさぼる財閥などの強欲さも見事に映し出している大作であった。
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