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霊幻少林拳のtakのレビュー・感想・評価

霊幻少林拳(1979年製作の映画)
3.2
サモ・ハン・キンポー製作の「霊幻道士」がキョンシーブームをつくる以前に、キョンシーを題材にしたカンフー映画があった。しかも名匠ラウ・カーリョン監督作。これは80年代の「霊幻道士」シリーズに見られたホラーコメディーとは異なる。キョンシーを扱う道士を主人公にしたコメディ要素を全面に出しながらも、その根底には復讐劇というカンフー映画伝統の熱き血潮が流れている。そんな二重構造が楽しい。ただ、そのどちらにも徹することがないだけに半端な印象は残るけれども。

酒と博打に夢中の道士はかつて有名な拳法の使い手だった。今では道士として旅人の死体を呪術でキョンシーにし、故郷まで送り届けることを仕事としている。弟子に「キョンシー拳」なる拳法を習得させたが、覚えの悪い弟子は次に繰り出す型を教えてやらないと戦えない。博打のトラブルで足に怪我をした道士の代わりに、弟子は女友達とキョンシーを連れて旅に出る。ところが、その中に1体おかしなハゲキョンシーがいた。実はキョンシーに扮装して紛れ込んだ男だった。彼にはある目的が。

「キョンシー拳」というアイディアが面白い。「出発」では前進して攻撃、「拝礼」では合掌した姿でチョップ、「回転」では手を突き出して回転・・・とキョンシーの動きを取り入れた拳法。これを80年代に観ていたらきっと真似していたかもしれない(恥)。80年代キョンシーのように人の呼吸に反応して襲ってきたりすることはないけれど、道士を先頭にピョンピョン跳ねてついてくる姿は不気味だがなんともユーモラス。それにしてもラストのカンフーアクションが素晴らしい。リュー・チャーフィの「鷹の爪」拳と弟子のキョンシー拳が悪党と戦う姿はアイディア満載の名勝負だ。予想以上に面白かった。正統派カンフー映画に飽きた人にはご推薦します。
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