真っ黒こげ太郎

フォレスト・オブ・ザ・デッドの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

3.8
木、切るな!!(感染が広がっちゃうだろ!!!)




山奥で大量伐採を行い、環境団体から抗議を受けている多国籍企業。
彼らは山の木々に新型成長促進剤の「GX1134」を密かに投与していた。
そんな中、従業員の一人が環境団体の工作により負傷。
成長促進剤を投与した木の樹液が身体に入り込むや否や、従業員はみるみる凶暴化してゆき…。

そして後日、パイロットを目指しており父の後を継ぐ気などさらさらない、社長の息子であるタイラーが調査の為に派遣される。
だが山奥には、人肉を求める無数のゾンビが!!!
体内に入るとゾンビ化してしまう成長促進剤で変異した樹液によって、山中にゾンビが大量発生したのだ!!!




バイオ技術によって変異した樹液によって人々がゾンビ化し、山奥でゾンビパンデミックが巻き起こるサバイバル・ホラー。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「ランド・オブ・ザ・デッド」といったゾンビ映画の新作ブーム、通称「ゾン流」の最中にリリースされた、ゾンビホラー映画の一つ。
まぁ今でも同じぐらい頻繁にゾンビ映画は国内リリースされてますけどね。(アレな映画も交じってるけど…w)


そんなヘンテコブームの最中の便乗映画でかつ「木、切るな!!」や「戦慄の新世紀エコロジー・ホラー!!!」というスッゴイバカなキャッチコピーや宣伝文句からお気楽なバカホラー物かと思いきや、かなり真面目で正統派なゾンビ・サバイバル映画でした。


開始約8分で最初のゾンビが登場し、約20分足らずでゾンビパニックが巻き起こるテンポの良さで話が展開。
その後は生き残った人々でグループを組みながら脱出を目指したり、仲間が犠牲になったり、イカレたコミュニティに入らざるを得なくなったりと、正にこの手のゾンビパニック物のお手本的なシナリオが展開。
内容自体は真っ当なゾンビ物なので新鮮味は皆無ですが、登場人物の個性派しっかりしてるし、緊張感も中々。
対立やエゴなどの書き方もしつこくない良い塩梅、展開面でもツボを突いたイベントが多く、真っ当なゾンビ物として楽しめます。

生き残ったのが環境団体と従業員で最初は反発しあっていたが、生き残るため手を組んでいく展開になっていくのが良い。
例によって最初の内はメッチャクチャに仲が悪く、言い争ってばかりで協調性の欠片もない連中だったりする。
ですが最終的にはお互い生き残るために、自然とお互いに仲間意識が芽生えていく様をクドくなく描いている。
登場人物も、何も知らずに巻き込まれた社長の息子に、仲間想いな作業員のリーダー、ヘタレでトラブルメーカーな研究員に実はツンデレだったヒロイン等、キャラは皆個性立ってました。
ゾンビの造形も申し分なく、死人みたく痙攣して動き、きちんと人間を襲い、人肉を貪り食ってるのでゾンビ関連に関しても文句ナシですね。
(後述するように、カメラワークや残酷描写に関する問題点はあるのですが。)

またゾンビパニックの原因は中々捻くれており、実は樹液自体は体内に入らなければ無害なのだが、ヒロインが環境保護活動の為に木の中に釘を仕込んだのが原因だった。
環境保護団体の後先考えない活動の所為で、汗水垂らして働いていた真面目な労働者がゾンビになってしまうというこの不条理。ああ、この世の正義は何処に!?w
(一応終盤ではヒロインもそのことで思い悩んでいたことが発覚するが。)

人間同士のエゴが原因でゾンビパニックが発生した皮肉塗れの展開や「死霊のえじき」をオマージュしたであろう閉鎖的で狂ったコミュニティ等、制作陣のゾンビ映画に対するリスペクトも感じられました。
後半で唐突にコミュニティが出てくるのはやや唐突に感じられましたが、おかげで話にメリハリが生まれ、最後まで飽きずに見れました。
ゾンビ映画あるあるの連発ながらいい意味であるあるな展開の連発に、見ていて微笑ましくなりましたね。



そんな感じで全体的にはかなり良く出来たゾンビ物ではあるのですが、全体的に手堅く纏まりすぎて明確な”強み”がないのが難点ですね。
制作者のゾンビ映画愛は十分に感じるし、内容も間違った事は全くしてないんですが、何と言うかもうちょっと「この映画ならでは!」な何かが欲しかったですね。
後、カメラ揺れが結構激しめで見ずらい所がチラホラあったり、レイティングの都合か予算の都合かは不明ですが残酷描写を余り見せず大部分が血糊だけで直接描写を見せなかったのは残念。
人体やはらわたを貪り食う描写もあるっちゃあるんですが、それもカメラが飛んだりして見せてくれんかったのは結構ガッカリでした。
(血糊はかなり派手に飛び散るんで、グロい雰囲気は味わえるんですけどね。)


とは言え、この手の無名ゾンビホラーにしては十分見れる出来でしょう。
ゾンビ映画ファンなら、押さえておいて損は無いと思いますよ。