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2000人の狂人/マニアック2000のblacknessfallのレビュー・感想・評価

4.1
南部を訪れた旅行者達は創設100年記念のお祭りだからとその町の住人達に歓迎され祭りに参加することに。
気さくで陽気な町民達だが所作や言動に不可解さがある。ほんのり不気味な違和感が徐々に露になっていく。変だと気づいた時にはすでに手遅れ。狂騒状態の町のおっさん数人に取り囲まれた旅行者の女性は腕を切断される🦾 おっさんどもはウッヒャーと盛り上がりその腕🦾をグリルで焼いてモシェシモシェ喰らう。ウキキキとイキきった笑声を立てながら。
ここは狂人達の町だった!!
構造的に秀逸なのはこの狂人の面々、実は南北戦争で滅んだ南部の町の住民の亡霊達で100年に1度甦り、そこで都会(北部)から来た人間を虐殺する。南部の怨みを晴らしてるんだよ笑

「ヒャーハッ! south gonna rise again~♪」

バンジョー🪕で奏でるノーテンキなテーマソング(亡霊達が演奏)もサイコー😃⤴️⤴️


ゴア・スプラッターの発明者、H.G ルイスの代表作である本作、数年ぶりに観ると新たな発見がある。
『ミッドサマー』はかなり影響受けてる気がする。数十年に1度の奇祭、気さくだがどこか変な雰囲気の住民達、彼等に囚われた外部の人間のディスコミュニケーションの恐怖。全然、格調と雰囲気は違うけどまったくディテールと構造はそっくり。
そして、何より煌々と陽光が差す真っ昼間に映し出される奇祭と儀式でのやたらとグロく露悪的なゴア描写。
おもしろいのはアリ・アスターのように自身の内省や体験を投影して作品を作るタイプの監督が逞しい商魂からエロやグロを何の思い入れも拘りもなく景気よく出す即物的な映画を撮ってきたルイスと結果的に似た手法で映画を撮ったとこ。

ここがルイスの凄いところなんだよ。ルイス自身は映画好きでもないしホラー愛もない、商魂マターの人なんだけど、それが故に客が求めるものをまんま出すということに躊躇がない。
そして映画愛もないから技巧や雰囲気、構図等に無関心。結果、オリジナリティのある露悪とインパクトだけは異様に強い描写を生み出した。
そういう意味でルイスの映画はホラーであってホラーじゃない。基本、コメディベースでギャグも多く、無駄なエロも多い。グロいんだけど怖くない。でも、生理的にキモい、なので何を観てるのかわからなくなる笑
この違和感と異様さが本当に独特でダルい話運びや拙いカメラワークであってもルイスの映画はおもしろい。
そして、このホラーであってホラーでない、でも異様にキモくてヤバイ映画であるところ、これも『ミッドサマー』と同じなんだよな。

ルイスの客の欲求の応える露悪的で即物的な手法が監督の内省的哲学を投影したホラーと共通点を持つなんて、やっぱりルイスは偉大だよ。

昨日、DOMMUNEでH.G ルイス特集やってて、観たくなって再見することにした。
特集の内容も良かったけど、糖尿病の合併症で脳梗塞になり闘病中の中原昌也さんの病床でのインタビュー音声が聞けたのが一番よかった。
拗れきらしたサブカル冷笑おっさんのイメージを持つ人もいるかも知れないけど、この人ほど冷笑と程遠いエモーショナルな人はいない。
ルイスにしてもサブカルに有りがちな斜に構えてネタとしておもしろがってるわけではなく、トラッシュ/スカム カルチャーの本質を捉えその魅力を愛している。ガジェットや知識マウントで自己を大きく見せようとる自称マニアとは違うんだ。
代理の人の報告では麻痺が残りやっと長時間座っていれる状態だという。どこまで回復するかわからないけど今以上の回復を祈る。
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