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グレート・ウォリアーズ/欲望の剣のTSのレビュー・感想・評価

3.2
【アグネス姫が怖すぎる】
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監督:ポール・ヴァーホーヴェン
製作国:アメリカ/オランダ
ジャンル:ファンタジー
収録時間:125分
興行収入:約10万$
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発掘良品第26弾。16世紀初頭の西ヨーロッパの物語です。1501年西ヨーロッパ、騎士道物語。このあたりから、少し時代がズレてないかと思われてしまいます。騎士道の思想が根底にあるのはすなわち中世ヨーロッパ。中世ヨーロッパとは、ゲルマン人のヨーロッパ侵入から十字軍の結果、教皇が没落し代わりに国王が力を持ってくるあたりまでを指します。1501年となると、大航海時代も始まってますし、宗教改革も間もなく始まるのでやや時代がズレてる気がします。ここのところから、ああこれはファンタジーなのだなと思わされてしまいます。

今作の確信犯は間違いなくアグネス姫です。こいつはヤバイ。と、同時に女性の怖さを垣間見た瞬間でした。正直怒りを通り越して萎えてしまいました。こんなにコロコロと気が変わる人が世にたくさんいるのではないかなと考えるだけでも恐ろしい。王子スティーブンと聖マーティンは彼女の手の中で転がされております。

今作はファンタジーなのですが、そんな可愛い言葉では済まされない、エログロ映画です。アグネス姫は素っ裸になるし、最後に服を燃やす時はみんな素っ裸。モザイクをしてるのはまだ良心的です。幸いにも『ヤコペッティの大残酷』を先に見ていたのでその辺りは大丈夫でしたが、こういう素っ裸系の映画に慣れてない人がみると唖然となるでしょう。おまけに首吊り死体の下で、王子と姫は掘ったマンドレイクを笑顔で食べます。犬の肉片をツボにいれてペストを促すだの、この作品、完全に常軌を逸しています。それ程狂気じみた内容なのに、王子と姫がいるせいでファンタジーになってしまう。なんという映画だ(笑)

また、アグネス姫の表裏も恐ろしいですが、この映画は正義が何なのかということも間接的に訴えている気がしました。こうやって、姫を助けている王子サイドが如何にも正義に見えますが、道中でこの連中は殺人や強姦をしでかします。果たしてこんな連中が正義の味方なのでしょうか。正義と悪は紙一重だということ。そして自分が正義と思えばそれは紛れもなく正義なのだということが理解出来ました。聖マーティンも正義を掲げます。王子たちも正義を掲げます。これこそ、ワンピースのドフラミンゴが声高に主張した「勝者こそが正義だ!」ですね。それ以外の何物でもないということです。

なんともぶっ飛んだ映画です。しかし、発掘良品として登場することからもコアなファンの方が多いようです。個人的にはまずまずでしたが、こういう映画を堪らなく愛する方もいるはずです。中世ヨーロッパの少し変わったものが見たい方は是非。

ちなみに途中で出てくる影絵芝居は、東南アジアのクディリ朝のワヤンのパクリでしょうか?(笑)変なところに、全く異世界の文化をぶっこんでくる、何とも呑気な映画です。
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