はぐれ

この女たちのすべてを語らないためにのはぐれのレビュー・感想・評価

4.2
巨匠ベルイマンが初めてカラーで撮った作品。『どですかでん』や『魂のジュリエッタ』のように黒澤、フェリーニの最初期のカラー作品と同じく原色をフィルムに焼き付けた強烈な色使い。巨匠陣が同じ思考になっているのがなんか微笑ましい。しかもカメラマンはあのスヴェン・ニクヴィスト。挑発的なその色彩設計がとにかく楽しい。

内容は重厚なものではなくライトなスラップスティックコメディ。まるで初期のウディ・アレン監督作を観ている錯覚に陥る。てか、ベルイマン信者のウディ・アレンが相当な影響を受けたんだろうなーって容易に想像出来る。ドタバタ恋愛劇に軽快なジャズをかぶせるやり方なんか完全にそうだもんね。

ストーリーも凝っているというか、完全に観客をおちょくってる(笑)著名なチェロ奏者の元に音楽評論家が自伝の執筆のためにインタビューに来るという話なんだけど、その主人公であるはずのチェリストが劇中で1回も顔を見せない。まるで主人公の顔を性器扱い(笑)あの手この手で隠しまくる。
まさにベルイマン流の評論家論というかマスコミ論。作者の私生活なんかどうでもいいからごちゃごちゃ言わんと作品だけ見てろと。その軽妙洒脱なテーマ処理がとっても心地よい。
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