「無情な大河を下りながら　もはや船曳きの導きを感じなくなった」というアルチュール・ランボーの「酔いどれ詩人」の一説。孤独な男（イザック・ド・バンコレ）はスペインの空港に降り立つ。駅のトイレ、息を吐きながら、ゆっくりと太極拳の動きを行う男の天地は逆さまになっている。ビジネス・クラスの待合室、「スペイン語が話せるか？」との問いに男は「No」とだけ答える。フランス人通訳（ジャン＝フランソワ・ステヴナン）の言葉に男は表情を変えることなく、全てを聞き終えた後、再び歩き出す。男の本名は不明で、「孤独な男」というコードネームだけが割り与えられている。男のミッションは自分こそ偉大だと思う男を墓へ送ること。リュミエール空港（マドリッド・バラハス国際空港）から高速でマドリードへ、上下品の良い紺色のスーツにノー・ネクタイでキメた男は、指示された目的地にある高級ホテルに泊まる。数日待って、コードネーム「ヴァイオリン」を探せ。そう指示された男は、異国スペインの地での空白の時間を哲学的に過ごす。左右が見渡せるオープン・カフェ、エスプレッソを別々のカップで2つ注文した男は、ウェイター（オスカル・ハエナダ）が1つしか持ってこなかったのを見ると、怒りを露わにする。男がエスプレッソを2つ要求するのには意味がある。殺し屋たちとコンタクトを取りながら、マッチケースの中にある紙でボスからの伝達を理解した後、エスプレッソの泡で一気に飲み干すのだ。

　発信源の残る携帯電話を嫌い、誰とも会話をしない主人公の神経症的な様子は、真っ先にジャームッシュの99年作『ゴースト・ドッグ』で、専ら連絡は携帯電話ではなく、伝書鳩のみだった主人公ゴースト・ドッグ（フォレスト・ウィテカー）を連想させる。あの作品でイザック・ド・バンコレはゴースト・ドッグの大親友のアイスクリーム屋・レイモンを演じていたが、今作の孤独な男は生前のゴースト・ドッグの意思を受け継ぐ人物に思えてならない。ハイテクを嫌い、仕事に必要なスペイン語を覚えようとせず、本ではなく、美術館の絵の中に価値を見出した男の自分探しの旅は、この世界のシステムの元締めをアナログな嗅覚で見つけようとする。ジャームッシュ組である『ブロークン・フラワーズ』のティルダ・スウィントン、『デッドマン』のジョン・ハート、『ミステリー・トレイン』の工藤夕貴の起用もさながら同窓会の様相を呈す。相似形のようなマッチ箱とエスプレッソ、全裸にまとった透明なレインコート、現実を模写した美術画、ファム・ファタールの誘拐とストリートに貼られたポスター。幾つものイメージが心底難解な物語を補足し、不条理劇の骨子すらも補強する。まるで鈴木清順のプログラム・ピクチュアのような物語の中で、主人公はいつだってイマージュの力だけで目的地（トポス）に辿り着く。ゴースト・ドッグの意思を継ぐ男は、自分の嗅覚だけを頼りにグローバル経済の黒幕へのアクセス権を手に入れる。毎度撮影監督、作曲家の起用に一過言あるジャームッシュだが、キャリア30年目にしてクリストファー・ドイルと日本代表BORISを初起用する嗅覚にもただただ度肝抜かれた。

いよいよ明日になります。宜しくお願いします。
4夜目はジム・ジャームッシュ特集です。
こちらに書けなかったエピソードも語り尽くします。
2017.08.23.(水)21:00~03:00 『映画の日 4』charge:500yen
@Music Bar LYNCH　 栃木県宇都宮市二荒町8-12

変わった行動を繰り返す謎の男。
何気ない風景こそ切り取り方ひとつで特別な瞬間になる。

眠くなるけど面白い不思議な世界観。

「チャイティラテ…グランデ」
土曜の午後、スタバは混んでいる…

周りを気にしてる割には全身白ずくめのやけに目立つ美しい女性がおれの前に座ってからこう言った…
「日本語は話せますか？」
「はい、日本人ですから」
彼女はおれに小さなマッチを渡すと声をひそめた…
「数日待って…あがた森魚をカバーしてるストリートミュージシャンを探して」
彼女が行ってしまったあと、マッチを開けると小さな紙が入っていて…こう書いてある
「スペインの雨は主に平地に降る」

こんな映画です😁💦

最近、「パターソン」観てから…またジャームッシュがマイブーム…全作品観直す勢いなのですが、この作品はやっぱりすごい！ある意味ジャームッシュ映画のマスターピース…傑作だとおれは思います。
ただジャームッシュに興味ない人が観ると絶対寝るでしょうね😁💦
　
そういう人にはこんな見方…
千鳥のノブ風…全シーンにアドリブ突っ込み！
これ決めておくとけっこう楽しめます。

主人公のイザック・ド・バンコレ(この人ナイト・オン・ザ・プラネットのパリの黒人タクシー運ちゃんね)、全編無表情な彼を見ることになるのですが…

「女を待って」と言われた彼がホテルの部屋に戻ると可愛いメガネ女子が全裸で彼を待っている！お！ジャームッシュ面白すぎない？
「私のお尻好き？」
バンコレ無表情に「好きだ」
(好きなんかーい💦)
「やる？」
「仕事中はやらない」
(やらんのかーい💦)
夜…ベッドで彼の腕枕でスヤスヤ寝てる全裸のメガネ女子…
バンコレ目がパッチリ開いてる…
(ね…寝れん！)

もう…ほとんどコントである。
なのにずっと部屋に流しておきたくなる…どのシーンも美しくオシャレなのだ！

とにかくバンコレの顔面力が…💦無表情に人を殺しそうな恐ろしい顔なのに絶対いい人！って雰囲気もある。それをよく表すシーンがある。

子供たちが四人くらいバンコレについてきて彼に言う。
「アメリカのギャング？」
「違う」
どう見ても殺し屋みたいに見えるのに子供たちが気安く声をかけられる雰囲気もある😁💦

とにかく、この映画…途中で寝るか…最後まで観てから激怒するか…おれみたいに「傑作だぁ」と思うか？

いやぁ、自信ないなぁ😁💦

数日後、駅前であがた森魚の「日本少年」を歌ってる青年を見つけギターケースに小銭とあのマッチ箱を入れると…彼はポケットから別のマッチ箱を取り出しておれに渡した。

マッチ箱の中にはやはり小さく折り畳んだ紙が入っていて、こう書いてある…

「チャイティラテ…グランデ」

• #NAOKI'Z