ふっくー

アングスト/不安のふっくーのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
3.5
新作となっていますが、こちらは83年に公開された作品です。
作品自体が<異常>であり、その凄まじさは他に類を見ない映画史上に残る芸術性をも発揮、観る者の心に深い傷痕を残した。1983年公開当時、嘔吐する者や返金を求める観客が続出した本国オーストリアでは1週間で上映打切り。他のヨーロッパ全土は上映禁止、イギリスとドイツではビデオも発売禁止。アメリカではXXX指定を受けた配給会社が逃げた。ジェラルド・カーグル監督はこれが唯一の監督作であり、製作費の全てを自腹で制作したため、彼はこの作品のあと全財産を失った。
(ただそのあとはプロデューサーとして、多くの作品や演出に携わり、数々の賞なども受賞し、今作で失った金銭は取り戻すことが出来たみたいです。これも才能ですね。取り戻せて良かった)

日本では「鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜」というタイトルでビデオスルーされたみたいです。

タイトルにもあるように「不安」という感情を全編通して感じられる作りになっていて、何とも陰鬱で気持ち悪いおどろおどろしさは今作の最大の魅力である独特なカメラワークにある。
殺人鬼Kの背中から追いかけるカメラワーク、まるで隣を歩いているかのようにピッタリとくっつくカメラワーク、そして彼が殺人をする様子をそのカメラワークのまま最前線でただひたすらと見せられる異常な構成。

被害者達の断末魔など、悲鳴はほとんど描かれておらず、殺人鬼Kのコツコツ音を立てる靴の音、そしてバックで流れるやかましいBGM。
彼が食べるソーセージすらも気持ち悪く映るあの感じ。
画面に表現される空気感や、目線など全てに不安要素がある。
殺害された被害者の周りを無邪気に遊ぶ犬だけが今作の逃げ道なのかもしれない。
「俺には完璧な計画がある」そう言っていた殺人鬼Kだったが、見る限り計画性は全くなく、突発的な犯行であることは明らか。ただ彼にとっては殺人そのものが完璧な計画であったのだろう。全てはその犯行後の快楽のために。。



ようやく時代が追いついて公開された感じですね。なので今見るとそこまで怖く感じないかもしれません。ただ今作は完全に一般受けしません。
80年代のホラー映画といえば
「死霊のはらわた」
「エルム街の悪夢」
「ザ・フライ」
「ZOMBIO/死霊のしたたり」
などが有名であり、言わば激しめなゾンビ映画などが世間を盛り上げてくれていた印象なので、そんなラインナップの中での当時の今作はずば抜けて陰鬱であり、異常さが際立ったのかもしれませんね。
去年に都内でも日本で劇場公開されていたのが凄すぎるし、どうやら本編で彼が食べていたソーセージを再現したグルメも映画館で販売されてたらしい笑。

日本の宣伝文句がやたらと期待値を上げるようなことを沢山してるけど、そんな盛り上がれる作品じゃないぞ!!笑
ホラー好きなら一度は見ておいて損はないかも!?もちろん人にはオススメなんかできないし、人によっては相当なダメージを負いかねないので、鑑賞は自己責任でお願いします。
ふっくー

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