ギズモX

リザレクションのギズモXのレビュー・感想・評価

リザレクション(2002年製作の映画)
1.9
最近、レンタルショップに立ち寄ると、新作レンタルよりも中古販売の方がラインナップが豊富になったような気がする。
近所のTSUTAYAは軒並み閉店に追いやられたこともあって一つの無常感を感じる一方、いつものレンタルでは手が出しにくい作品にも目が行くようになり、ちょっとした楽しさを味わっています。
そして本作『リザレクション』もワゴンの端に埋まっていた所を『韓国版マトリックス』の謳い文句に騙されて購入したのですが、これがとんでもない代物。
夢小説だとか、なろうだとか、セカイ系だとかそんなチャチなモンじゃねえ、中学二年生の妄想をありったけ捩じ込んだら未知の化学反応を起こしたとしか言いようがない出来だったので、買ったついでにこの映画を紹介させていただきます。
どうせ誰も見ないと思うし、今回はネタバレ全開でいくぞ!(ネタバレしても理解できないと思う、それぐらいこれはぶっ飛んでる)

まず、この映画のジャンルは一言でいうとゲームものだ。
『レディープレイヤー1』のように、冴えないオタク主人公が大企業が制作したゲームに参加するといった話。
しかし、本作はそのゲームの内容の時点から既におかしくて、
《これはマッチ売りの少女を模したゲームです。
路上でライターを売るヒロインがいるので、プレイヤーは他の参加者の妨害を阻止して恋人同士の関係になりましょう。
そして最後は物語と同じく凍死させましょう。その瞬間にプレイヤーのことを思っていたら勝利です》
というもの。
今これを読んでる人は何言ってるのと思うだろうが、本当にそう説明されるんだからしょうがないだろ。
映画が始まると、演歌がバックで流れる中、ヒロインがライターのガスを吸ってラリって死ぬという衝撃のシーンで幕を開ける。
ちなみに、なぜ大企業はそんなゲームを開催しているのか、なぜヒロインはライターを売っているのか、そのあたりの説明は全くない。

本作の最大の問題点として致命的な説明不足が挙げられる。
物語には5W1H、いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように、を描くことが必要不可欠であるが、本作はそれが全然できていない。
一つ例を挙げるとゲームが開始される場所。
本作はゲームものである以上、そのゲームを行うフィールドが用意されてないといけない筈だが、劇中では主人公が携帯電話でゲームに参加すると表明した直後、いきなりロード画面が差し込まれて、いきなり無人の遊園地に移動するから、そこが現実世界なのか、現実に模したVR空間なのかが一切分からない。
ゲームに登場する一般人は全員NPCなのか?実在する人物なのか?
そのあたりの説明も全くないのだ。
おまけにキャラクターも酷い。
主人公はプロゲーマーになると豪語してる癖にはゲームをプレイしている描写が一切なく、常に妄想にふけってる痛い奴。
プロゲーマーが見たらブチ切れること間違いなし。
ヒロインは亡霊の如くライターを売ってるだけ。
ゲーム中は他の参加者も登場するが、そのほとんどがポッと出の痛い電波を放ってる奴らだらけで、しかも登場した際にいちいちキャラクター紹介が挟み込まれてくるおまけ付き。
正直何のために登場してるのかが理解できない。
説明不足な上に余計なものが多すぎる。

話に戻すと、ゲームに参加した主人公は他のプレイヤー同士のゴタゴタに巻き込まれた後、凍死しかけているヒロインを漁夫の利で攫うことに成功する。が次の日になるとヒロインは主人公の銃を奪って居なくなっており、ライターを買ってくれない人に向かって銃を乱射するようになっていた。
(なぜそのような行為に至ったのか。なぜそのような力を持っているのか、そのあたりの説明も全く無い)
一般人、参加者、特殊部隊共々を血祭りにした果てに企業の研究所に連れ去られたので、主人公が特訓して、強くなって、救出に向かう展開になるのだが、その特訓の内容はというと、
"餌をつけずに魚を獲れ"
それだけ。
はい。それだけで主人公は『マトリックス』のネオのように弾丸を止めたり、超人的な動きができるようになります。
このゲームは魚獲るだけで超人になれるんですね〜。すごいですね〜(棒)
あと、その時にどう見てもおもちゃにしか見えない銃『サバ』が主人公に手渡される。
所持する人の意思の力で威力が決まるらしいが、何もできないヘタレがそれを使って無双するあたり、とてつもないご都合主義を感じた。

その後は、研究所内で低品質な『マトリックス』ごっこが繰り広げられ、主人公がメインルームっぽい場所に辿り着いたその瞬間、ゲームマスターっぽい人の声から、僕の心を粉砕したトドメの一言が炸裂する。

「少女の記憶はリセットした!」
「少女はもうお前のことを覚えてはいまい!」

お前ら面合わせて会話したことねーだろうが!
はじめましてだろうが!ふざけんなぁ!
確かにね、昨今の酷い作品には、主人公がちょっと喋っただけでヒロインの好感度がカンストしたりする魔窟みたいな展開はありますよ。
でも恋愛要素が入った物語で会話すらしていないというのはこれが初めてだわ!
初見時はあまりにも唐突だったから(あ〜。これはどこか見落としてるわ)と思って巻き戻しましたよ。ヒロインが銃奪うところまで。
でも絡みが全然ないんですよ!絡みが!
あるべきものが全くないんですよ!これは!

そこからはもう未知の領域だ。
言葉で説明するのが非常に難しいが、ヒロインがライターを上にぶちまけて銃を乱射したり、そのまま海の上を歩いてちょうちょを追っかけたり、超高速フラッシュバックが入ったり、街が爆発したり、UFOが現れたり。何だこれ。
何が"YOUWIN"だよ。わけがわからないよ。
これほど何も感じない"YOUWIN"は初めてだよ。
見終わった後に感じたものは虚無。
これは何という問答を延々と続けるしかなかった。

おかしな所はまだ他にもあるんですよ。
マルチエンディングとか。サバが鯖になるとか。
でも全部を説明しきるのは嫌!というか無理!
このレビューを読んで(何コレ)と思った人は、今すぐレンタルショップに行って本作を借り、真相を確かめてほしい。
この映画を鑑賞して一度も困惑しなかったなんて言う人は、多分この地球上には一人も存在しないと思う。

個人的には『チャージマン研!』『さよならジュピター』『幻の湖』『デビルマン』『デスクリムゾン』に匹敵する逸材で、こんなネタの宝庫が誰にも知られずワゴンの端に埋もれているのは勿体無い。
『邦◯チ』とかが好きな人は是非。
この映画の翌年に『オールドボーイ』が公開されたとかマジかよ。
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