みむさん

フェイトレス 〜運命ではなく〜のみむさんのレビュー・感想・評価

3.8
ノーベル賞作家ケルテース・イムレが、自らのホロコースト体験を綴った自伝的小説「運命ではなく」の映画化、作者自ら脚本も執筆。
第2次世界大戦中のブダペストで、父親と継母と共に暮らす14歳の少年ジュルカが辿る悲痛な旅。

ダニエル・クレイグが米軍兵士役で出番は少ないながらもいい役で出ていた。

ジュルカにとってはユダヤ人と非ユダヤ人の違いなど気にならなかったが、父の言葉、周囲の状況から徐々に考えるようになっていく。ナチスのユダヤ人迫害の真っ只中の時期、ジュルカも収容所に連れられていく……。

想像通りの辛い話だったが残虐行為そのものはほとんど出てこない。ガス室も彼は見たわけでもなく、ただひたすら空腹に耐え労働をさせられる。
収容所のユダヤ人は人格を認められず番号で管理され、なにかにつけて罰を与えられる姿から非人道的な行為が行われてるのは明らかに感じる。

月日や時間の感覚はなくなり、人として生きていくこともままならず、明日はどうなるかわからない状態、憎しみしか感じないというジュルカがそんな状況の中でも幸せな時間があったというのが意外。
地獄の中に「幸せ」を見いだし語ろうとする点では他のホロコースト映画と少し違う。
あんな状況ではそうでもしないと生きている感覚がなかったんだろうなとも思う。それにしても、綺麗事抜きにしてささやかな幸せを語ろうとするジュルカは強いな。

作者の自伝的ストーリーだし主人公ジュルガの回想の形で描かれるので彼が助かるのはわかっているんだけど。助かった後も意外な話だった。

ハンガリーのユダヤ人といっても人により運命はいろいろ。

ダニエル・クレイグが演じる米兵の言葉もいろいろな意味で深い。

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