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悪い子バビー/アブノーマルのtorumanのレビュー・感想・評価

4.1
"バビーは死んだ"

母親に命じられるまま、35年間窓も無い部屋に閉じこもって生きてきたバビー。
とある事が原因で外界に出る事になる。
ヘルツォーク監督の『カスパー・ハウザーの謎』を連想させる作品。

冒頭から凄い瘴気を感じます。
部屋の閉塞感・不潔さ・神を利用した不道徳感。
絶えず部屋に聞こえる工場の音も、相乗効果で観客の気持ちを消耗させます。

動物虐待シーンがかなりきついシーンです。
Gを捕まえて分解する、呼吸する猫への実験。
死の概念・善悪の概念もないバビーを印象づけるシーン。
最後に"動物虐待はありません"と出てました。

前半の暗い出口の無い世界から…外界へ。

外界では全く変わったトーン。
自由である事の素晴らしさ・開放感!
無垢な野生児バビーの暴走振りが凄まじい、街では絶対関わり合いたくない💦

言語を超えた"音楽"という存在の尊さ。
多くの人々と引き合せてくれ、彼に変化をもたらします。

仲間のバンドとのパフォーマンス。
バビーの苛烈な生涯と覚えた下品な言葉を繋げるだけで、そのままハードコアパンクになってしまいます。
ここのステージでのバビーは唯一無二の存在感!

色々な要素が散見するその作品、その中でも神の抑制と不在が大きなテーマの1つです。
教会のパイプオルガン演奏者でもあるサイエンティストは、「GOD FUCK YOU!」、「所詮、人間は原子を最配列したもの」と言い切ります。

神から解放されたバビーの行き先は…

スリラーでもあり、コメディでもあり、人間ドラマでもある作品。
観ている間中、感情が色々な所に振り回されました。

過激な描写が人を選ぶ作品かもしれません。(30分で退場した方もいました。)
私には観た事を後悔させない良作でした。
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