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キミに逢えたら!のEikeのレビュー・感想・評価

キミに逢えたら!(2008年製作の映画)
3.1
何かやる気を感じられない邦題だが原題は「ニックとノーラの無限のプレイリスト」。
売れっ子のマイケル・セラとキャット・デニングスによる「青春ラブストーリー」。
2008年の作品だからもう一昔以上前の作品になるのか…。

インディーズバンドでギターを担当する高校生、ニックは自分を振ったトリスに未練たらたら。
NYCのクラブでのギグに新しいBFを伴って現れたトリスを目にして意気消沈する彼の前にトリスのクラスメート、ノーラが現れます。
ひょんな事からノーラの即席BFの役割を引き受けてしまったニックはノーラと二人、一夜の「冒険」を繰り広げる事になるのですが・・・。

いわゆる学園ラブコメが激減したのが90年代後半。
しかし2000年代の半ばころからセンスを感じさせる「青春恋愛映画」がポツポツと目につくようになってきました。
例えば 「(500)日のサマー 」や 「アドベンチャーランドへようこそ 」などが好例ですね。
本作も然りです。
いわゆる大スターが出ているわけでも、お話自体に特に凝った展開がある訳でもない比較的地味なこうした作品の多くが未公開で終わるのは少々残念でしたが、「隠れた佳作」を見つける楽しみになっていると思うこととしましょう。

さて、そんな本作を見て実を言うと少々複雑な気分になりました。
いかにも現代らしくニック以外のバンドメンバーが全員ゲイであったり、アーロン・ヨーやジョン・チョウといったアジア系アメリカンの存在感が思いの他強く描かれている点は中々興味深い。
NYCのインディーズバンド&クラブシーンが舞台と言うことで「尖った」テイストを盛り込もうとすればいかようにも可能だと思うのですが実にストレートな「恋愛映画」となっております。
クラブシーンが舞台なので飲酒シーンこそ多いがドラッグ関連の描写は皆無。これも昨今では珍しいですね。
お互いに訳ありながらも、惹かれ合うニックとノーラの間の「距離」が真夜中のNYCをニックのポンコツ車で右往左往する内に近づいて行く様は
ちゃんと微笑ましくもあり、好感も湧くのですが、そのストレートぶりに少し物足りなさを感じたのも又、事実。
それは80s-90sを通じて嫌ほど「学園青春映画」や「ラブコメディ」の洗礼を受けて来た世代だからかもしれませんが。
でも本作はそんな私でもちゃんと楽しめるものになっておりました。
逆にこの手のジャンルにあまり免疫のない(?)今の若い世代の方々ならどのような感想をお持ちになられるのでしょうか。

本作が気に入られた方にはとりあえずキャメロン・クロウの 「シングルス」やダグ・リーマンの 「go」 辺りをおススメしたいです。
他にも80s辺りからのアメリカ映画には本当に山のように青春学園ジャンルの作品がありました。今やそうした作品を楽しんだ世代が社会の中心、クリエイター層を担っている訳で。
その意味でも一見の価値はあるかと思います。
Eike

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