みきわめとおる

東京家族のみきわめとおるのレビュー・感想・評価

東京家族(2012年製作の映画)
3.8
山田洋次監督にとっての小津安二郎は、畏怖するゴッドファーザーであり、
いくら自らが渾身の作品を作っても、
どうしてもその存在を超えられない壁だ。

同じ松竹の同世代である大島渚や、吉田喜重は「小津は古い」と吐き捨て、松竹を離れそれぞれ独立プロを立ち上げ独自の映画世界を確立した。

生涯松竹で映画を作り続ける山田監督は、
小津安二郎問題を自分なりに乗り越えなければ、という気持ちが常にあった。

『東京物語』→小津の家族に関するマスターピースを自分なりに現代日本に作り直す作業もその為の必要な作業だった。

(結論!)
面白いし、無茶苦茶泣けた。

橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優!!

役者が皆素晴らしい。だが、しかし。
吉行和子にまつわる病院のエピソードは卑怯だ。あれをやってしまうと全てが台無しだ。
小津は、物語を淡々と紡ぎながらも世界普遍的に家族の喜び哀しみを見事に描く。

たぶん、ここでの反省を踏まえて、
同じ役者さんたちで、『家族はつらいよ』シリーズを生み出したたことが、山田監督の
本領発揮となった。「渥美さん、こんなのでどうかな?」と山田監督が天国の寅さんこと、渥美清に聞いている。すると渥美さん、

「おいおい、それを言っちゃあ、おしまいよう。」

「山田監督の代表作は、俺と作り続けた『男はつらいよ』シリーズに決まってるじゃねえか。これは小津さんか、オジさんか知らねえけど、決して負けてないあなたと私のかけがえのない世界的名作群ですよ!」

と渥美さんがあの細い目で笑った。