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白いカラスのtakのレビュー・感想・評価

白いカラス(2003年製作の映画)
3.3
人種差別発言をしたとのことから大学を追われることになった初老の教授。その直後に妻を亡くし、孤独になった彼は清掃スタッフをしている女性と出会う。二人は体だけでなく次第に心も通わせていく。彼が語り始めた驚くべき過去とは。

黒人でありながら肌の色が白かったために、彼の人生は普通ではなくなった。深く愛した女性は母親が黒人であることを知って別れを選ぶし、彼は結婚するためにユダヤ人であると名乗る。そして親や兄弟を、黒人であるということを捨てる道を選ぶ。人種偏見がなければ、彼の人生はまだ幸福だったはず。そう思うと複雑な思いになる。その悲しみを映画の日本題がうまく表現している。

アンソニー・ホプキンスは何でも演じられる俳優だ。ここでもその演技に圧倒される。それにしても最後には誰ひとりニコリともしない映画。テーマが重いだけに見終わって考えさせられる。だが日本人にとっては、今ひとつピンとこないテーマかもしれない。その分だけ、ニコール・キッドマン扮する女性の悲しみの方が理解を得やすいようにも思われる。この映画が遺作となった撮影監督ジャン=イヴ・エスコフィエは、カラックスの「ポンヌフの恋人」も手がけた人。寒々とした風景のなかに、互いに癒しを求めた男女が映されるところは、共通するところだな。若き日の主人公を演じたウェントワース・ミラーも好助演。

北九州映画サークル協議会例会にて鑑賞。
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