うっちー

王になった男のうっちーのレビュー・感想・評価

王になった男(2012年製作の映画)
4.2
見終わって、なんとも言えない感動に包まれた。笑わせ、泣かせ、ハラハラさせ、と情に訴えながら、君主とは、政治とは、という理の部分にも訴えかけてくる。韓国の時代物の映画には、こういう政治的な示唆を含んだものが多いように思うが、今まで観た中でもトップクラスに面白くて、また、好きなタイプの映画。

謀反を怖れる暴力的な王が毒を盛られ倒れる。回復するまで、王に瓜二つの男を見つけ、事なきを得ようとした腹心の部下が企てた策が、宮廷、果ては国の政治にまで影響を及ぼしてゆく、というストーリー。王、そして王に瓜二つの道化師役の二役を演じるイ・ビョンホンの魅力が遺憾なく発揮されているし、腹心役のリュ・スンリョンや毒味役のシム・ウンギョン、ト部将のキム・イングォンなど脇も総じて名演で、見せ場や泣き所がたくさん。そういう意味ではビョンホンのスター映画ではないのだ。

どちらかというと面白半分、かつお金目当てで宮廷に連れてこられた道化師のハスンが、国の内情や虐げられた庶民、そして政争に明け暮れる宮廷上層部の有様を目にし、束の間の君主役を本気で勤めようとする様が本当に感動的。その中で、周りにいる家臣や疎遠だった王妃(ハン・ヒョジュが本当に上品で美しい!)らとの関係も新たに築いてゆくのだが、個人的に一番ジンときたのが、ト部将との一件。真面目一徹のト部将に偽りを見破られ、命を狙われてからの沙汰のなんという温かさ、寛容さ。無骨なト部将が男泣きする姿は、こころが震えるほど印象的だった。

また、腹心、ホ・ギュンのラストの機転の鮮やかさには、胸のすくようなカタルシスを感じたし、ラストシーンの爽やかさは、謀略入り乱れる政争劇の闇を晴らしてくれる。

こういう時代劇が大ヒットする韓国って凄いと思うし、これはありとあらゆる国の指導者や高官に観て欲しい秀作。笑いのバランスも含めて秀逸で、鑑賞後の気分が確実にアガります。イ・ビョンホン、惚れる〜。
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