好き勝手なてそ

ヘンゼルとグレーテルの好き勝手なてそのレビュー・感想・評価

ヘンゼルとグレーテル(2007年製作の映画)
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韓国産ファンタジーホラー。韓国って色んなタイプのホラーできるなぁ〜
■あらすじ
山道を車で走行中に事故に遭ってしまったウンス。やがて森に迷ってしまい、少女に導かれ森の中の屋敷を訪れる。
翌朝ウンスが帰ろうとすると、森でまた迷ってしまいーーという話。

タイトルどおり、「ヘンゼルとグレーテル」にもなぞらえているが、そちらはなんとなーくだけわかっていれば大体問題なく観れると思う。
逆に言えば、ネットで調べれば青空文庫とかで全文読めてしまうのだけど、
あまり読み込まないで先にこっちを観たほうが正直おすすめかも。多分かなり先読みできちゃいます。

■ざっくり感想
メルヘンで切ないストーリーだった。
メルヘンな世界観の作りと、子役の演技が大変良かった。

・子役について
主人公ウンスは屋敷から逃げられなくなってしまうので、だんだん一家全員が怪しく見えてくるわけだが、
子役3人とも、天使か悪魔か…はたまた嘘か本心かわからないような演技でウンスに関わってくる。3人とも上手くて見応えあった。

・ストーリーについて
先に書いた通り、グリム童話ヘンゼルとグレーテルをあまり細かく覚えてると、逆に先読みできてしまうと思ったので、
新鮮な気持ちで楽しみたい人は「どんな話だっけ」と思いながら、この映画で思い出しつつ…くらいがちょうどいいと思った。

この作品はちょっと書くとかなりネタバレになりそうなので、気になったことは下記に書きますが、
アジアのホラー作品では他にないタイプだなと思ったので、ホラー好きの人は一見の価値ありと思います。


ーー以下ネタバレ含みますーー



■ヘンゼルとグレーテルの原作の要素
映画視聴後に、グリム童話の原作を読んだ。
全文読んだうえで思い起こすと、かなり序盤から展開が読めてしまうことに気付いた。
(1)ヘングレと3人の子どもの境遇
原作では、ヘングレ兄妹の親は貧しく飢饉で苦しみ、父は泣く泣く、母はわりと冷淡に、子供たちを森に置いていくことを決める。
ヘングレは実の両親に捨てられているのだ(しかも厳密には2回)。それで飢えながらも力を振り絞り森をさまよい歩くと、お菓子の家にたどり着く。
この映画では、ウンスが迷い込む家の名前が「楽しい子どもの家」なのだが、さすがにヘングレの背景を考えると孤児院すぎるなと思った。
(2)お菓子を食べる
朝食からいきなりお菓子てんこ盛り。ウンスは誕生日みたいと言ったけど、さすがに朝からはないだろー!糖尿病なっちまう!
このあたりはお菓子の家をがっつり想起させているが、後にわかるとおり3人はかつて孤児院で虐待をうけ、まともな食事を与えられず本物のひもじさを経験しているので、そのあとのサンタさんからもらったクッキー以降、甘いものが幸せの象徴になっているのかもしれない。
(3)宝石を盗む
これ全く記憶になかったので原作を読んでみて良かった。
原作では魔女を殺したあとに、魔女が持っていた宝石を持ち帰り、父親と幸せに暮らすというラストだった。
この映画では、いかにも成金の雰囲気で現れたピョンの妻ギョンスクの指輪がなくなるシーンがあり、やがてそれは子どもたちが盗んだことがわかる。
つまりこの時点で、ギョンスクのことを母親とは思ってない。魔女のようだと、悪者だと捉えてると思われる。
(4)パンくずを落とす
森に再び入ろうとするウンスに、迷わないようにするためにパンくずを道に落としていくようにヨンヒは勧める。これは原作では家にまた帰れるようにヘングレが落としていくもの。
…けど、原作では鳥がパンくずを食べて家に帰れなくなる展開なので、ヨンヒたちはなぜわざわざウンスを森に迷わせようとしたのかちょっと謎だった。
(5)かまどで焼き殺す
ピョンを暖炉に突き出して殺すシーンは、原作の魔女をかまどで殺すシーンのオマージュ。


■ウンスの過去の意味とは
子どもたちにお話をしてと頼まれ、おとぎ話を話し出すウンスだが、内容はウンス自身の物語であることが皆わかる。
この内容によると、ウンスもかつて幼い時に父が病死し、一時的に孤児院に預けられたことがわかるが、そこでも虐待に近いことがされていたと思われる。
そうなると、果たしてウンスといいピョンといい、森に迷い込むのは偶然ですか?という感じすらある。

■屋敷はどこにあったのか?
最初ウンスが事故にあったとき、ウンスが目を開けたまま倒れていた気がしたので、多分死後の世界…もしくは、三途の川を渡る前みたいなことかと思っていた。
雪が都合よく積もったり(木も結構緑色だった気が)、どう頑張っても抜け出せなかったり、最後のどこでもドアとか…現世とは思えない。
仮にあの場所に孤児院があったとしても、回想シーンの孤児院とはかなりかけ離れたイメージだったので、幻想を見ていたことには間違いなさそう。

■ラストシーンの意味とは
やがて子供も生まれ、よい父親としての人生をスタートしようとしていたウンスの眼の前に現れたノート。
ノートにはヨンヒたち3人だけが描かれていて、親なしでも楽しくすごしていくような描写になっていて、ウンスにとってはハッピーエンドのように見えるが、
ヨンヒたち子どもたちにとって幸せなエンディングなのかはよくわからなかった。

最後の雪の降るなか去っていくシーンは右側の建物にDream Farmと書かれていて、これも孤児院か?とか勘ぐってしまった。
孤児院だったら森から出て別の孤児院で暮らしていくということかと思うけど、でもこの子達の本当の姿は子どもではないはずなので現実的には厳しそう。
やっぱり本当は亡くなってる存在なんじゃないかと思うんだよな…。
階段を登っていくようなラストになっているので、これが天国にのぼる表現なのかもと思った。