山本

海がきこえるの山本のレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
3.4
東京旅行以降の、主人公と武藤里伽子のいがみあいが、どちらも共感できるように描かれているのがすごいなと思った。東京のお金持ち出身でもなければ地方の出身でもないわけだが、たぶんその立場になったらそう思うだろうなーと思わせるように作られている。
たとえば新宿のハイアットリージェンシーで元カレと会っている時に、主人公を呼び出すシーン。自分はアンタと別れて地方に行ったけど別の男と楽しくやってるよ、と自慢するためにやってんだなーと。
それだけだと単に嫌なヤツだなで終わるんだけど、そのあと、部屋に戻った途端に鞄を投げ捨てて「なんでこんなに見栄張ってるんだろう?」と自分自身にムカついて怒る。ああ、こういう自己ツッコミで自分の心を傷つけることってあるよなあと。
自分がやってることはダサいことだとわかっちゃいるけどやってしまう。主人公も「高知だと1人で自立してる感じだったのに東京にいる時は周りの目を気にするんだな」みたいなことを言っていて(言ってたっけ?)、そういう、身近な人が自分以外のコミュニティにいる時の姿を嫌に思う視線も、誰しも既視感があるよなと思った。
屋上で友達と喋るシーンで、高知城が映ってるところに、手前にスプライトの缶がトンと置かれてそっちにカメラがフォーカスして後景の高知城がぼやける演出がなんかすごい覚えてる。
山本

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