りっく

ミークス・カットオフのりっくのレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
3.7
実在の人物であるスティーブン・ミークに着想を得た本作は、砂漠の真ん中で確信もないまま彼に導かれ、路頭に迷うことになった女性も含めた一団の、背景の大自然と対比されるようにちっぽけな不信や疑念が拡大するさまを描き出す。ここでのミークは現代世界における様々なリーダーのメタファーであろう。彼らの道行きは、この世界の道行きと重なり合わせることができる。

そこで登場するのが先住民の男だ。ここで不信や疑念に苛まれた人間は、得体の知れない彼を排除しようとし、あるいは自分の力を誇示し序列を作ろうとする。それもまた不寛容な現代世界におけるヒエラルキーと同じ構造だ。そこでミシェル・ウィリアムスが先導者に抵抗し、生きるために性悪説ではなく、性善説を信じ込もうとする女性の視点を体現する。持続する緊張感が途切れることのない、異色の西部劇だ。
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