emily

遠くでずっとそばにいるのemilyのレビュー・感想・評価

遠くでずっとそばにいる(2013年製作の映画)
3.3
27歳の志村朔美は交通事故により10年分の記憶をなくす。17歳の心に戻ってしまい、現状を楽しみつつも、10年分の記憶と、本当の自分に向き合う事になる。恋人だった細見や、性同一障害のかおると関わりながら、半分だけの絵や写真などから、自分の本当に失った物に気が付く。そうして腕に残った消えない傷・・17歳に戻る事で、本当の自分とその深い傷に向き合い、前を向いて未来へ向かって行く物語。

狗飼恭子の同名小説を映画化。17歳に戻った志村朔美の未来に希望と夢を描いてるきらびやかな心と、過去を懐かしむ大人との狭間でゆれる心情描写が丁寧に描かれている。そこに絡む人々と蓮の花や池のすがすがしい季節感のある映像が、詩的な雰囲気に溶け込む。

ミステリーでありながら寄り添う映像美と音楽に物語が心地よく溶け込み、ボートに寝転がって漕いで行くようなゆっくりと流れる時間が心地良い。徐々に明かされる過去と、抱える心の痛み。皮肉にも記憶をなくすことでそれに向き合い、さらにそれを抱きしめる事になる。そうして生かされている人生を、生きていくことを決める。その光さす横顔には強い生が通っている。

必要な物は最小限。
基本があればそこから何色にでも染まれる。
少ないほうがそこから工夫をもたらし、それを楽しめる。
物がありすぎると、それに溺れて欲が出てしまう。
だから必要な物は最小限でいいのだ・・
そうやって不必要な物は捨てて、身も心も軽く。大切な物をしっかりいつでも見ていたい・・
emily

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