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神さまがくれた娘のくりふのレビュー・感想・評価

神さまがくれた娘(2011年製作の映画)
3.5
【月はどっちにも出ている】

レンタルにて。劇場行けばよかった…とまでは思わぬものの、予想よりずっとよかった。前半の大仰な紋切型展開にはちと萎えましたが、裁判バトルモード突入からいやー引っ張る。

『アイ・アム・サム』のパクリ…いやオマージュ(笑)らしく、基のプロットが同じ。が展開はかなり違って興味深い。インド…いやタミル気質がわかり易く出ている気がしました。

知的障害を持つ主人公が父となるが、妻がある事情でいなくなり、自分の精神年齢を越えゆく娘を育てられるのか?となるお話。

娘を引き取りたい「敵」も登場しますが、そちらにも譲れぬ愛の事情がある。ちょっと唐突な対応でしたがあちら陣営。

しかし娘を巡る裁判に至っても、決して善悪の戦いとは言い切れないさじ加減となりますね。

主人公を演じるヴィクラムさんの演技が症状的に正しいかはわかりませんが、彼を取り巻く周囲の人々が巧く、自然に受け入れられました。

でもさ、普通に会話できない男が、ミュージカルになるとなぜ滑らかに歌えるの?(笑) わかっちゃいるけど苦笑しちゃって。前半一番の膝カックン。

娘役の女の子が素人っぽく自然で可愛らしい。役名のニラーは月の意味だそうですがタミル語でしょうか?本作の月、ものすごくキレイですね。CGだとはわかっちゃいますが、見せ方が巧い。お月さまを「伝言係」にして会話する父娘なんてね、子供っぽいけどズシリと来ます。

で、裁判が面白かったんですが、すごいですよね…丸く収まるなら嘘もつく。主人公側の弁護士が、え、それやっちゃうのっていう(笑)。タミルの人ってこうなんでしょうか。というか、こういう描写でOKなんですね。よく言えば大らか。

しかし「どちらが勝つか?」の先がいいですね。「月はどっちにも出ている」のですよね、本作は(笑)。

主人公がラストである決断をしますが、この物語が積み重ねたものの先では、ものすごい重みとドラマが詰まっています。これは『アイ・アム・サム』では至れなかったもので、結末はこちらの方がずっと映画として強い、と思いました。

<2015.3.2記>
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