【男らしく潰そう】
昔々、シュヴァンクマイエルを知った時、最も、と言えるくらいに面白かった逸品。
久しぶりに見返して、やっぱこの人スゲエと思った。初見では、人体破壊のブラックな描写そのものに惹かれたが、今回は、“有害な男らしさ”と、それが形づくる集団がどう変態化するか?を笑い飛ばしているのが面白さの本質だ、と今さらながら気付かされる。
原題がまさに“男らしいゲーム”になっているが、男って、要するに破壊することが好きなんだよね。
サッカーという、“スポーツマンシップに則った”試合をする筈が、その競技場はコロッセオのような殺し合いに発展し、観客はそう来なくっちゃと熱狂する。やがて選手も観客も、審判までもが同一化する。“試合”から産まされ続ける死体は、淡々と機械的に処理される。
参加者は皆、それが大きなシステムの一部だと理解して、考えることは止めて楽しもうとしている。つまり、シュヴァちゃん映画あるあるだが、これは大きくは社会主義を皮肉る構図でありましょう。
振り返ると、女性がまったく登場しないことも、たいへん男らしいと思います。
しかしまだまだ、男が男を心から笑い飛ばせる時代には、至っていませんよね。
<2024.5.9記>