麦子の元に幼い頃に別れた母が突然押しかけてきた。難色を示す兄だったが押し切られる形で母を家にあげることになり兄と二人で暮らしているアパートで母親との三人暮らしが始まった。
共同生活を通して麦子と母は少しずつ距離を縮めていくも、些細な喧嘩も絶えず、結局、長すぎる空白期間を埋める間もなく母はこの世を去ってしまう。
麦子は死期を悟った母はもしかしたら最後の時間を自分と過ごしにきたかもしれないとふと思う。
だけど、母の死をどう受け止めるべきなのかやっぱり麦子には分からない。
ただカッとなって突き飛ばしてしまった際の母の困ったような笑顔が宙ぶらりんのまま心から離れないでいる。
そんな折、麦子はお骨を届けに母の故郷を訪ねることに…。
村をあげての異例の歓待に戸惑いながら麦子はそこで知らなかった母の青春を知っていく。
親子の話ではあるのですが、それだけではなく、後悔を描いた話なのかなと思いました。
人はどうしたって失敗してしまうし、やらなきゃよかったとか、やっときゃよかったとか思わずにはいられない。
そういう想いのいくつかはしっかり心に焼き付いていって、苦い後悔になっていく。取り返しがつかないものも生きてればいくつも生まれてしまう。
だけど、そういった過去があるから人は優しくなれるし、大人になっていくんじゃないかな。そんな風に気づかせてくれる作品でした。
分かりやすく盛り上がる作風ではない分、心にじんわり入ってくるわ、挿入歌の赤いスイートピーのメロディラインがエモいわで、あれ、俺、気づいたら泣いてるみたいな。
自分にとってとても大事な一作となってます。