GT

新しき世界のGTのネタバレレビュー・内容・結末

新しき世界(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 韓国産のマフィア物。犯罪組織に潜入した警察官、ジャソンの葛藤と苦悩を描く。
 最初から最後まで緊張感満点、夢中で鑑賞することのできる映画で中弛みというものがない。特にジャソンの正体が「ボス」であるチョン・チョンにバレそうになるシーンの緊迫感は凄まじい。如何にも韓国映画らしい作品で、全体的に冷めて乾いた雰囲気が漂っている。ストーリーや雰囲気からなんとなく北野武の「アウトレイジ2」を個人的に連想した。容赦ないバイオレンス描写も北野っぽい感じ。(逆に言えば、北野映画が韓国映画っぽいと言えるのかも?)
 ジャソンとチョン・チョンの「友情」は、この作品の主要なテーマの一つだ。中国系韓国人であるチョン・チョンはかなり飄々としてカラッとした人柄をしており、そうした人柄にジャソンは惹かれ彼を慕うが、スパイという自らの立場、彼を騙しているという罪悪感に苦しむ。凄腕ハッカーによりジャソンの正体はチョン・チョンにバレていたが、チョン・チョンはジャソンとの友情から彼を始末することを躊躇う。最後虫の息となったチョン・チョンとジャソンの立場を超えた語らいは感動的だ。尤もチョン・チョンも善人というわけではなく、組員を殴り殺したり女スパイを強姦した上に殺したりと、きっちり怖い人でもある。
 警察上層部の狙いは、警察の息のかかった隠居状態のチャン・スギを組織のリーダーに据え、ジャソンをそのナンバーツーにすることで組織を完全に警察の管轄下に置くことだった。妻も抗争に巻き込まれ流産し(ご丁寧に妻まで警察の手先だった)、この一件が終わったら海外に逃げさせてやるという約束も反故にさせられたジャソンは完全にブチ切れ、チャン・スギや警察のカン課長その他自分の邪魔になる人物たちを次々に殺害し、名実共に組織のリーダーに君臨するのだった…というのが結末。この邪悪なカタルシスも、如何にも韓国映画って感じ。マフィア映画好きな人は、是非とも見るべき映画だろう。
 
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