あらすじ
26歳同士の洋子(成澤優子)と太郎(片山享)が、慌ただしく引越しの準備をしている。2人は高校2年のときに付き合い始め、東京で一緒に暮らしていた。しかし10年の間にお互いの気持ちは変化し始め、太郎は別の女性に惹かれるようになり、2人は別れることになった。一緒に荷物を片付けながら、昔話をしてなかなか先に進まない。一緒に過ごした時間の長さを痛感した太郎は自分の選択に自信が持てなくなるが、洋子の想いを振り切るように、再出発を決意する。
感想
初めのシーンに出てくる時計が、同監督の劇場映画デビュー作の「モノクロームの少女」を思い出させました。
時間の経過毎に画面に時を刻む時計。震災で時が止まった時計とは違って。
それでも終わらない引っ越しの支度。
やり直そうとお互いが思い合うのにズレるそのタイミング。
あるな。あるある。
素直になれない。
やり直そうと言われると、別れようと思った辛い気持ちが暴れ出す感じ。
辛かったと伝えたくて甘えたくなる気持ち。今も好きと言われて嬉しくて思わず、自分は嫌いと言ってしまうみたいな。
そもそも。
アパートの契約が切れる前日まで、二人でアパートで過ごしている事が。
当日が引越しの日という所が。
本当に別れるのか、ただのケンカなのかと。
元の鞘に収まる。に私も賭けたくなります。
誰かの実話なのでは?と思わせるエピソード達に。
江古田の地名に、昔、西落合で暮らした20才頃を思い出します。
青春Hシリーズの名前にビクビクして、観ることを躊躇っていたのですが。
これは恋の物語。
本当に誰かの恋の物語。
空には満月の夜。月が綺麗ですね。
夢をすごいねと言われると嬉しい。
映画に登場したごはんを作って貰って最後の晩餐。
映画をごはんのエピソードと共に活き活きと楽しそうに語る太郎に、憎まれ口を叩きながらも瞳が優しくなる洋子。
悪くない。から、美味しい。感想も、昔の頃の、素直で可愛い洋子にだんだん戻っていく感じも。
太郎の何が好きだったのか思い出すみたいに。
一人残された部屋で、太郎が作ってくれた栃尾の豆撰の油揚げが出てくる「モノクロームの少女」のパンフレットを読みながら帰りを待って、でも帰ってこなくて、多分、全部のパンフレットやチラシを読んで床に積み上げたのでしょう。
太郎の夢を改めて理解したくなったのでしょう。
幸せだった頃にどうしてもっと夢を応援出来なかったのだろうと。
一緒に暮らし始めた最初の頃は、映画に出てくるごはんを作って食べさせてくれて。
でも、本当は映画の仕事で洋子を食べさせていきたかったのでしょう。仕事に迷走する毎日に。映画のごはんを作らなくなって。生活の中での映画を失って。
ずっと二人でいたい洋子は、映画の仕事を諦めて普通に仕事をして欲しいと口にするように。ごはんは全部、自分が作ってあげるようになって。生活の中でずっと一緒にいたい太郎を失って。
まるで賢者の贈り物?相手を想うあまり大切な物を手放してしまう。
痛いトゲ。
好きで大切な人から言わると痛いトゲ。
映画関係のお仕事すごい!
そんな事を言われたら。
可愛い。嬉しいと思います。
夢を応援されると嬉しい。
でも。
違う。
気が付いて良かった。
最後に仲直りして、
「今度の部屋は狭いよ?」
洋子が太郎の夢を応援すると言っているのでしょう。
狭い方がくっついていられるから…。
これはかわいい恋の物語。
震災の時助けてくれたじゃない。
の言葉に
一瞬、くるみちゃんとひろしくんを思い出してしまいました。ひろしくんは上京して、映画監督を夢見たのかなと。
これは「モノクロームの少女」の未来のお話なのかと。
床に散らばるチラシ達にも。色々。
青春Hなので。
言わせて頂くとしたら、新しい彼女にキスマークを付けられたHと、引っ越し前夜に想った洋子との空想Hとでは。
足を絡ませてくるとか。
ドキドキ感。青春のHは空想と妄想。
そんな恋の物語。
5のだめカンタービレのポトフはのだめを支える為に千秋が作ったメニュー。
大切な人を支える為のメニュー。
太郎から洋子へ。
おそらく徹夜したふたり。洋子から太郎へ。
手渡されたポトフ。
一度に睡眠欲と食欲と性欲が満たされる映画でした。
色々激しい(笑)全ていつかの誰かの青春。
男の死ねないグッズ。
あの新潟の柿の種の缶は。
お兄ちゃんも持っていたような気がします。
本当に。エピソードが豊かで笑ってしまって。
青春もHもこんな風に少し笑っちゃえる方が幸せな気がします。
これは幸せな恋の物語。