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不気味なものの肌に触れるのarchのレビュー・感想・評価

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)
3.5
濱口作品の哲学が身体的な表現に昇華されていて凄い。

濱口作品は常に他者とは究極的には理解不可能な存在であるという前提のもとにつくられていて、そのことを身体的な接触に準えて本作は描いているようだった。

他者の存在を通して相対的に認識していく自己、すなわちそれがコミュニケーションの本質で、他者に自己を見出していくという行為に他ならない。それはつまりコミュニケーションでは自己しか計ることが出来ない、他者を解ることには至れないということでもある。
ただ濱口竜介作品はちゃんと理解不可能だよねってことは分からせてくれるし、それが分かればやりようはある、次の行動には移れるよね、というささやかな希望を残していく。毎回その理解不可能だということを自覚するスタートラインまでの話をしているようですらある。

その中で本作は触れられる 触れない そのギリギリを弄ぶ踊りを象徴的に扱う。(このワークショップ感、非常に濱口竜介っぽい)
特にその後の喫茶店での会話にある「触れてしまうと怖くない」というのは、まさに理解不可能であることの自覚を意味しているようだ。
触れてしまうことが多い濱口作品だが、『悪は存在しない』は触れることなく終わった作品という気がする。

全体的にも異様な程にコントラストが高く、明度の低い映像で特異。そのうえで都会に溶け込む自然を俗物的に捉えていて、異様なグリーンとブラックの映画になっていた。
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