平成2年の男

セインツ -約束の果て-の平成2年の男のレビュー・感想・評価

セインツ -約束の果て-(2013年製作の映画)
3.5
・蓮井重彦氏が絶賛しているディビッドロウリー監督の作品。同氏の作品を観るのは『さらば、愛しきアウトロー』から続き二作目。

・蓮井のジジイのコメントを転載
『フランシス・フォード・コッポラはともかく、スティーブン・スピルバーグも、マーティン・スコセッシも、「ショット」に対する自覚がやや稀薄な人たちだと思います。これだと納得できるショットが彼らにあまりない。いろいろな場面が組み合わさると作品としてそれなりにまとまりますが、印象に残るショットが比較的少ない。 ショットは、構図や光線だけではなく、被写体との距離というものも決定的な要素です。『セインツ』は、監督としての処女作に近いものですが、彼は被写体との距離をほとんど本能的に心得ています。例えば一本道を遠ざかって行く母と娘とを撮る時にはどのような場所にキャメラを置いて撮るかとか、人物を撮る場合にはどこでクローズアップ的なものを入れるかということを、ほとんど感覚として身につけている。ルーカスはともかく、コッポラやスピルバーグ、その次のトニー・スコットといった人たちの世代を超えて、全く新鮮なアメリカ映画を撮ってくれたと深く感動しました。
(中略)
さらにわたくしが特に気に入っているのは、『セインツ』での娘の誕生日の場面です。アフレックの妻役のルーニー・マーラの家を訪ねてきた警官が、ギターを持って弾き鳴らす。「もうそろそろ帰らなきゃ」と言って帰るのかと思うと、表で二人は寄り添っている。もうケイシー・アフレックがやってくるんだから、そんなことをしている場合ではないと思うのですが、そこに娘が来て、お母さんが知らない男と一緒にいるところを見るシーンが素晴らしいと思いました。そこでは娘に二人を見せることが、決定的に素晴らしい。
(中略)
それから、アフレックが家にたどり着く直前に撃たれてしまい、通りがかった車を止めて「あと何マイル先まで行ってくれ」と血だらけで言う場面があります。あの車を運転している黒人が非常に魅力的です。彼はこれから両親に会いに行くと話します。そういう何でもない人間がふと出てくる時に、その人をほぼ100パーセント画面に生かしてしまう。普通はあそこまで生かせないと思うのですが、あの運転しながら風景が背後に流れていくという場面は、新人監督であることを疑わせる出来ばえでした。』