かたゆき

レイルウェイ 運命の旅路のかたゆきのレビュー・感想・評価

レイルウェイ 運命の旅路(2013年製作の映画)
3.5
「長い年月、僕はずっと想像してきた。奴を見つけ出し、その舌骨を折り、眼球には箸を突き刺す。悲鳴を上げさせ、そして赦しを乞わせることを。その声を子守唄に眠った…。だが、時代は変わったんだ。我々はもう兵士じゃない。今の僕は単なる〝夫〟だ。妻は僕の全てだ。もう奴の事を掘り返さないでくれ」――。
1980年、英国。
一年前に結婚した妻と平凡ながらも幸せな日々を過ごしている初老の男性エリック。
だが彼は、時々精神的に錯乱して妻を困らせてしまう。
次第に私生活に支障を来たし始める夫に、妻は真実を知ろうと詰め寄るのだが彼は一向に理由を明かそうとしない。
やがて、実はエリックは第二次大戦中のシンガポールで旧日本軍によって言語を絶する壮絶な体験を強いられたことが明らかとなる。
そんな彼に追い討ちをかけるように、旧友からかつての敵であった〝彼〟が実は今も生きていて、のうのうと生活していることを知らされるのだった……。

物語は、そんなトラウマに苦しむ現代のエリックと彼が日本軍の捕虜となって地獄のような鉄道建設に従事させられた日々を交互に行き交いながら、罪と赦しを巡るドラマを濃厚に炙り出してゆく。
実話を基にして描かれたというそんな本作を複雑な思いを抱きながら、この度鑑賞いたしました。

戦争という非日常に追い込まれたとき、人は誰もが各々の正義を振りかざし、時には取り返しのつかない過ちを犯してしまうという真実を、実力派の役者陣をそろえ、冷徹に見つめたその視線はなかなか鋭い。
やはり戦争は悲劇しか生まないということを改めて実感させられました。
戦争を知る世代がもはや殆ど居なくなろうとしている現代の日本において、この事実は忘れてはいけない。

ただ、純粋に映画としてみれば、演出として拙い面がちらほら散見されるのが惜しい(特に、過去パートでの日本軍に隠れてラジオを造るエピソードや自死を選ぶ主人公の友人。もっと巧い見せ方があったはず)。

とはいえ、この事実を多くの人に伝えなければという製作陣の思いには、一日本人として素直に好感持てました。
最後に提示される本人たちの写真からは、やはり事実の重みがずっしりと心に響きますね。
うん、久々に観て良かったと思える作品に出会えました。
かたゆき

かたゆき